2020/03/18
危機発生時における広報の鉄則
リーダーは具体策とともに力強いメッセージを
2月29日、安部首相は今回の社会的危機について公式記者会見を開きました。冒頭の発言の構成は、新型コロナウイルスについての現状、感染拡大を抑止する方針、事業者や自治体へのイベントなどの集会自粛の要請とテレワークの推進、全国小中高校の臨時休校の要請、必要な助成金制度の準備、感染者への哀悼やお見舞い、検査や医療体制、治療薬開発の決意、国民全体への協力呼び掛け、乗り越える決意、最前線の医療関係者への敬意で締めくくりでした。
国民、感染者、医療従事者、自治体、事業者、学校といったメインのステークホルダーへのメッセージがもれなく含まれていました。また、立ち向かう決意、国民への呼び掛けもよかったと思います。特に「感染者への哀悼やお見舞い」「医療従事者への敬意」が入っていたのでホッとしました。
ただ、感染者への言葉は途中ではなく、最初の方に入れた方がよりよかった。その点、3月11日に行われた高野連の会見では、最初に感染者へのお見舞いの言葉があり、じわっと心が温かくなりました。
緊急記者会見で時間を制限するのは「あり」
この会見は、まだ質問があるのに広報官が打ち切ったとして一部批判が出ていますが、緊急記者会見で時間を制限するのは、私は「あり」だと考えます。もうこれで最後にしたいといった場合には、質問が尽きるまで行うといった考え方もありますが、今回はそれに当たりません。
映像を見ると、広報官が「これで最後の質問にします」と言った際、安倍首相は振り返り驚いた顔をしたところをみると、ご本人ももう少しやるつもりではあったことは見て取れます。しかしながら、官邸の記者会見は着席ではなく立って行うこともあり、首相の体力温存の必要性や記者の質問から、総合的に判断するのは当然だと思います。
記者会見の配分はどうだったか。全体で36分。首相からは19分、質疑応答は17分。質問時間が2分短いものの、ほぼ同じ程度の時間は確保しています。むしろ私が違和感を持ったのは、記者からの質問でした。
5つの質問のうち「反省」「結果責任」「教訓」といった質問が3つもありました。未曽有の社会的危機の渦中にまだあるわけですから、振り返って責任を追及する場面ではありません。国全体でどのようにこの危機を乗り越えるのか、対策は十分か、できていないことはないか、しわ寄せがいってしまう体力のない中小企業や生活者、感染者を守るための配慮のあり方、政府の足りない部分を指摘する質問をする必要があったと思います。
国民の不安を背負った質問であれば、予定の時間を延長して説明した可能性があります。報道機関には、社会的危機発生時における質問のあり方を考えてほしいと思います。
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