2015年のネパール地震の時に救出作業で活躍した英国救助隊のドローン (「Drone surveillance helps search and rescue in Nepal」 出典:wikimedia commons )

消防活動用ドローンは2009年くらいから本格的に世界の消防署で活用しており、災害対応機能(防水、耐熱、防曇耐火、つり上げ荷重)などの向上も、ほぼ毎月のスピードでさまざまな改善が試みられている。

全米消防長会の2017年4月19日付の記事(https://www.firechief.com/2017/04/19/what-to-know-before-buying-a-fire-department-drone/)を読むと、アメリカ国内の消防局でもドローンの導入についてはまださまざな議論や検討事項があるという。州法や航空法でドローンのエリアと高さの規制や、フライトの事前申告義務などが複雑で、出動後すぐにドローンを使えない消防局もあるが、徐々に改善されていることなども紹介している。



High Tech Fire Investigation: Drones (出典:YouTube)

驚くのは、ドローンを消防車の現場到着よりも早く飛ばして、逃げ遅れ者や火災などの規模、交通渋滞回避の出動ルート選択するほか、火災時の排煙箇所や消防車の到着位置の選定などの災害情報の把握、現場到着後は火災消火活動の進行状況、火災建物の倒壊危険状況把握、隊員の安全管理、残火鎮滅確認、火災原因調査のデータ活用、災害教育のアーカイブなど、主に現場指揮者が必要とする情報収集に活用されていることである。

火災時の活用だけではない。長距離鉄道の脱線事故時の全体状況把握、同時多発テロなど大規模集団災害時の要救助者数事態状況把握のほか、土砂崩れや雪崩災害時にはドローンにサーモグラフカメラを搭載して生き埋め者を捜索する時にも使われている。

ヘリコプターを持たない中小規模の消防局管内での広域森林火災時にとても重要な情報収集ツールとして役立ったという報告もある。

今、主に消防局で使われているドローンやUAS(Unmanned Aircraft Systems:無人航空機システム)で災害特化された機種については、下記のビデオが分かりやすい。


Unbelievable Ways Drones Can Save Lives (出典:YouTube)

上記のビデオに紹介されているように、目的は違っても共通する基本機能はビデオカメラによる映像や音声情報の収集だが、下記のオプションも標準化されつつある。

・要救助者と話せる遠隔無線付き(音声のみ)
・行方不明者の位置を特定するGPS機能
・スピーカーによる山岳救助時等の避難誘導
・夜間の人命検索用サーチライトや信号用フラッシュ
・ピンポイントに生き埋め場所などを示すグリーンレーザー
・緊急出動を示す赤色灯などの光を発するもの

さらに以下のように画期的なものも考えられている。

・ドローンそのものがAED
・水難救助用救命浮環用アタッチメント付き
・モニター付きテレビ電話
・消火弾の取り付けアダプター付き
・ロープアンカー設定時の活用(救命索発射銃の代替)
・放射能探知システム(上空&地上)
・噴霧消火設備

さまざまなドローンの飛行制限を行っている航空局では、ドローンオペレーターライセンス取得希望者に対して、事前にオンライン教育を無料で行っている。航空法に基づく空域の安全を守る義務を果たすため、社会と行政との歩み寄りをフットワークよく行っているように感じる。アメリカ航空局は約25kg以上のドローンに対して登録を義務づけている。

■米国航空局のオンラインオペレーター事前教養テスト
https://www.faasafety.gov/gslac/ALC/CourseLanding.aspx?cID=451

最近では、米国の代表的な消防の情報サイトの1つである「Fire Engineering」が4月24日の記事でDJI M200を紹介したことから、多くの消防局がプロバージョンの災害対応用ドローンとして採用を検討している。

■DJI Introduces M200 Series Drones
http://www.fireengineering.com/articles/fdic/2017/04/dji-m200-drone.html


出典:DJI M200 Drone

日本では偵察以外の消防・災害活動用としてあまり機種が入ってきていないためか、導入検討中の消防局が多い。本当に災害現場で使えるのかなど、十分なテスト期間やオペレーター養成教育などの条件付き購入などを行って、継続的なメンテコストが少ないメーカーのものを選ぶべきだと思う。

また、もし、航空局などがドローンオペレーターの公的資格取得制度を始めた場合、災害用ドローンオペレーターは各種災害に特化した内容でそれぞれのオプション種別資格とした方が安全なような気がする。

いかがでしたか?

無人飛行ドローンや無人自走式ロボットやボートなど、次々と無人で動作する新しい発明商品が出てくるため、各監督官庁もその対応や制限の取り決め対応などに追われていると思うが、操作するのは人間だ。2年更新で機種やタイプごとのオペレーターライセンスを持たせると共に損害賠償責任保険は活用上、無条件でセットにするべきだと思う。

でなければ災害時での活用の場合、ドローンが関与する2次災害も考えられることもある。組織内での安全運用マニュアルや災害別活用トレーニングなどを中心に実機を使った年間訓練計画の策定も必要だと思う。

以下、国内向け参考資料を挙げておく。

■消防活動用偵察システム(無人ヘリ)について
https://www.fdma.go.jp/ugoki/h2808/2808_25.pdf

■小型無人機(ドローン)の安全運航 に不可欠なワイヤレス技術 国立研究開発法人 情報通信研究機構 ワイヤレスネットワーク研究所 三浦 龍 電波政策2020懇談会 ワイヤレスビジネスTF (2016.2.25) ~「空の産業革命」「空のIoT」の実現に向けて~
http://www.soumu.go.jp/main_content/000401757.pdf


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
代表理事 サニー カミヤ
http://irescue.jp

(了)