2017/06/14
防災・危機管理ニュース
日本企業に与える影響
欧州において右傾化が進展した場合に、現地に進出している日本企業への影響としては、下記のような影響が想定されます。
1.政治状況の変化に伴う問題
欧州における大衆迎合的な政策・主張への一般市民の支持の拡大等、右傾化がもたらす影響は、政治・経済・社会の全般に大きな影響を与える可能性があります。日本貿易振興機構(JETRO)が2016年12月に発表した「欧州進出日系企業実態調査」(以下「実態調査」)でも、経営上の課題として、前年第4位の「欧州の政治・社会情勢」(47.9%)が最大となりました。
この背景には、2016年6月の英国のEU離脱の国民投票の結果からEUの今後についての懸念、さらに移民排斥等の問題に関連し、政治状況が流動的となっているとの懸念を読み取ることができます。テロの頻発等による経済的な問題の他、物流の途絶等の影響も懸念されることも挙げられます。
また、実態調査では、「不安定な為替変動」(47.8%)も前年第5位から第2位に浮上しました。これも英国のEU離脱の国民投票の結果が大きく影響していると言えます。
2.サプライチェーンの問題
欧州は比較的自然災害が少なく、これまであまり物流の面で問題は少ない状況でした。特に、EU域内の物流は通関も不要であり、比較的スムーズでしたが、昨今のテロの頻発等、物流途絶の問題への関心が高まっています。実態調査でも、第6位に「治安(テロなど)」(34.2%)が入っていることからも、日本企業の関心が高まっていると言えます。
3.賃金コストの上昇
EUは全体的に失業率が高いものの、今後さらに右傾化が進展した場合、外国人労働者への規制が強化される可能性が高い状況です。そのため、賃金コストが相対的に上昇する可能性が高いと言えます。
実体調査においても、「労働コストの高さ」(41.2)が第4位にランクされており、現状でも高い労働コストが更に上昇する可能性が高いと言えます。
4.採用難
相対的に失業率が低いドイツ等では、外国人労働者が減少する可能性があり、その場合、採用難となることが想定されます。実態調査においても、ドイツでは「人材の確保」(58.5%)が現状においても第1位となっており、今後、外国人労働者が減少する等の影響が甚大であると言えます。
5.労務管理上の問題点
現状においても、ドイツ、フランス、イタリア等においては、労働者保護の色彩が強い法体系となっており、現地事業の再編に伴う従業員の解雇等は非常に困難な状況です。
今後、右傾化が進んだ場合、更に、労働者保護の色彩の強い政策がとられた場合には、影響は甚大であると言えます。
(了)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方