ケース2. 多世代が暮らすマンション防災会議をWebで

次はこちらのFacebookページ「もしゆれ」の管理人さんがお住まいのマンションのケースです。

「もしゆれ」管理人さんのマンションは、20世帯前後が暮らす都内のマンションです。

(イメージ:写真AC)
 

そこでは毎年春先にマンションの防災イベントが行われており、2月に理事会が開催された際には、今年のテーマとして、新型コロナウイルスを念頭においた「Web防災会議」のアイデアも出されていたそうです。

しかし、まだ2月の段階では「パンデミック」ともされておらず、その影響を身近なものとしては実感していない時期でもあったので、行事は「防災まちあるき」を実施することに決定となりました。

ところが、3月中には防災まちあるきは実施できないことになり、だったら「Web防災会議」を実施してみようかという流れとなりました。そこで、まずはWeb会議を利用したことがある人がマンションにどのくらいいるか、アンケートをとったそうです。

(イメージ:写真AC)

このマンションは、未就学のお子さんを育てる子育て世代から退職後の生活を満喫されている方まで多世代の人が暮らしています。普段から行事参加率の高いマンションでもあるのでアンケートはほぼ全員からかえってきました。結果、Web会議未体験の方は約3割ほどいることが分かりました。

防災イベントに先立ち、まずは理事会でWeb会議を体験することにしてみたそうですが、理事4名と防災担当1名の計5名のうち、2名が全く体験したことのない方でした。

「もしゆれ」管理人さんが防災担当でもあったので、Web会議のアプリなどのダウンロードは事前にお伝えしつつ、例えば「ノートパソコンを持っているけど、カメラやマイクは付いているように見えないが大丈夫か」という質問には、電話を使って型番を調べつつ、対応機種であることを説明して設定のお手伝いをされました。

迎えた理事会当日、Web会議が始めての70代の理事の方もいるというのに、その日のうちに皆さんバーチャル背景を設定したり、ホワイトボードに触り始めて、好奇心の塊となって楽しんでくれたそうです。

なかでも「もしゆれ」管理人さんの心を打ったのは、いつも頭脳明晰な発言をされる理事の方の一言でした。その方は耳が聞こえにくくなっているものの、補聴器を付けると痛くなるので、会議の場ではいつも恐縮されながら聞き返しをされていたそうです。ところが、Web会議のその日、その方が開口一番に、「皆さんの声がよく聞こえます!」と、弾んだ声でおっしゃったそうです。

このお話を取材でお聞きしたとき、じーんときてしまいました。

「一体、誰? 高齢者はITが使えないとか言っているのは!」と、またまた思いました。

Web会議だからこそ、音量も自由に調整ができ、不自由を感じなくて済むことができるのですね。まさしく高齢者にこそ使ってもらいたいツールとさえいえます。

Web会議は、マンション防災やコミュニケーションの可能性をいろいろと広げていけるツールだと思います。家族や自宅がどうなっているか災害時には最も気になります。例えば出張中だったり、地震の際、都内は職場待機が基本なので自宅に戻れません。そんなとき、家族の安否やマンションの被災状況を確認でき、場合によっては速やかな修繕に向けての動きを作れるWeb会議はありがたいです。

また、実際に時間帯によっては会議に参加できない世代の方が参加しやすくなったり、小さい頃の顔は知っているけど、成長するとマンション内の子なのかどうか分からなくなるという問題もマンションでは起きてきますが、会議の時に子どもの意見も聞くなどすれば、顔の見える関係づくりも可能になります。

日ごろから使いなれることが大事

このマンション理事会ではトラブルも体験されたそうです。作業中iPhoneが熱を持ち過ぎてアプリが突然終了してしまったため、冷やす方法を実践してみたり、部屋によってWi-Fiがつながりにくいことを確認したとお聞きしました。

こんな失敗も経験として重要ですよね。いざ災害時になった際、始めてのツールは使えません。今後は、災害時にもできるだけ通信環境や電源が維持される努力がより必要になってきますが、ご紹介した2つの事例を参考に、皆さんの地域の防災力アップにつなげていただければうれしいです。