2013/09/25
誌面情報 vol39
企業のBCPを確実に守るデータセンター
都心から電車で40分ほどの東京都多摩市に野村総合研究所が昨年11月に竣工させた最新鋭のデータセンター「東京第一データセンター」が稼働している。多摩地域という内陸部の立地性、横揺れ対策の免震装置に加えて縦揺れ対策の制振装置を設置、停電対策が万全であるのはもちろんのこと、著しいコンピュータの性能向上にも対応した独自の建築方式と空調システムも導入している。
海から離れた多摩の丘陵地に立地
東京第一データセンターは、野村総研として5つ目のデータセンターとなる。同社は1990年以来、データセンター事業で25年余の実績があるが、そんなデータセンターのベテランが、新施設の建設で一番主眼に置いたのが“耐災害性”という。想定災害は、第三者の専門評価機関に依頼して危険要因を分析確認。震災対策をはじめ、土砂災害、地盤災害、噴火による火山灰に対する災害想定まで確認しているという。
こだわりの第一は立地。用地選定には、東日本大震災前から2年以上の歳月を費やし数百の候補地の中から厳選して決めた。データセンターは倉庫業者が手掛けたものも多く、従来は沿岸部の立地が多く見られたが、事業継続性が強く求められるデータセンターには、東日
本大震災以降、内陸部の立地が見直されている。同地は、東京湾から直線距離で40㎞近くあることや、丘陵地にあることから、津波や洪水といった浸水被害や沿岸部一帯が抱えている液状化の心配が無い。加えて首都直下地震の震源域からも一定の距離があることや地盤の安定性についても配慮した。
データセンターの顧客には、国内に加えて外資の金融機関も多く、海外から年間5~10回程度、データセンターに訪れるクライアントも少なくないという。このため、都心から30㎞圏内というアクセスにもこだわった。
被災時の交通面についても考慮した。京王線と小田急線が通るほか、幹線道路も複数、近くを走っている。
直下型地震の縦揺れに回転式制振装置
耐震対策に対しても余念が無い。地盤は専門機関に依頼して強固な地盤であることを確認。建物の躯体性能は建築基準法で定める1.25倍の仕様で、震度6強から7の揺れに対応しているという。
地震対策で見落とされがちなのが縦揺れへの対策だ。一般的な免震装置では、強い縦揺れを軽減できないことが指摘されている。同社のデータセンターは、横揺れに対しては免震装置、直下型地震で懸念される縦揺れに対しては制振装置を設けた。各コンピュータフロアーの各下層階の柱には、縦揺れを回転エネルギーに変動させて振動を吸収する最新装置「縦揺れ制振ダンバー」を設置した(写真)。
これにより縦揺れを20~40%程度軽減、免震装置では横揺れを3分の1程度に抑えることができるとしている。建物の安全性評価度であるPML値は5%以下。建物は最高水準度の仕様で設計されている。
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方