2020/06/30
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識
注意報・警報の図表情報から読み取るべきこと
気象庁の注意報・警報の図表情報からシナリオを作るためには、何を特に読み取ればよいのでしょうか。図を見る際には「何のリスクが高まるか?」と「影響が見込まれる時間、ピーク」という二つの点に注目していきます。
何のリスクが高まるか?
「何のリスクが高まるか?」は、どういった種類の注意報・警報が出ているかが手がかりになります。例えば内水氾濫の危険性が高まる際には「浸水害」という表示が、土砂災害の危険性が高まる場合には「土砂災害」という表示が、いずれも大雨注意報や大雨警報、大雨特別警報の欄に現れます。洪水注意報や洪水警報が現れるのであれば、中小河川の外水氾濫の危険性について述べていると理解します。
それぞれの注警報が何の災害と結びついているかを理解しておくと今後の展開シナリオが持ちやすくなるため、主だった災害について下に簡単にポイントをまとめました。図表形式の注意報・警報の情報を見る際の参考としてみてください。
・大雨注意報や大雨警報、大雨特別警報で「浸水害」と言及されているもの。
・1時間最大雨量の見込みが数値として発表されるので、それを元に影響具合を把握。
・「1時間に最大で○ミリの雨」がその地域にもたらしうる影響を把握するためには、「内水氾濫の手がかりを探せ」の記事参照のこと。
https://www.risktaisaku.com/articles/-/29199
・影響を受ける地域の絞り込みには「大雨警報(浸水害)の危険度分布」を主に利用(「洪水警報の危険度分布」も一部のタイプの内水氾濫を把握する際に利用)。
○中小河川の外水氾濫の可能性を示す情報
・洪水注意報や洪水警報が該当。
・影響を受ける河川の絞り込みには「洪水警報の危険度分布」を利用。
・大河川や一部の中河川の外水氾濫の場合は、洪水注意報や洪水警報ではなく、指定河川洪水予報を利用。
○土砂災害の可能性を示す情報
・大雨注意報や大雨警報、大雨特別警報で「土砂災害」と言及されているもの。
・影響を受ける地域の絞り込みには「大雨警報(土砂災害)の危険度分布」を利用。
○強風・暴風の可能性を示す情報
・強風注意報、暴風警報、暴風特別警報が該当。
・図表形式の情報の中では3時間ごとの風速も表示されるので、気象庁がまとめた「風の強さと吹き方」と照らし合わせて影響を判断するとよい。
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kazehyo.html
○高潮や高波の可能性を示す情報
・高潮注意報、高潮警報、高潮特別警報や波浪注意報、波浪警報、波浪特別警報。
・これらの情報も潮位や波高の予測が数字と図表形式の情報の中で示されるので判断に利用できる。
影響が見込まれる時間、ピーク
図表形式の情報から今後高まるリスクを把握したら、影響が見込まれる時間やピークも見ておきましょう。同じ大雨が降る例でも、短時間で終わるのか、それとも何時間も続くものなのかといった違いが、図表形式の中の時間軸を見ると一目瞭然です。今後、注意報から警報、警報から特別警報に切り替わる可能性があるかどうかも図表の中で示されるので、悪化するかという判断もできます。
図表形式の中には1時間最大雨量の予測や風、波の高さ、潮位などのように数字が出るものもあります。大きな数字が現れているタイミングや最大値などを見ることで、影響を受けることが見込まれる時間帯やピークに加え、ピーク時の影響なども見積もることができます。
また、台風のときには雨が強まる時間帯と風が強まる時間帯がずれることもあります。避難などの行動に影響する気象現象がいつごろ発生するかを横断的に見て判断していくとよいでしょう。
注意報・警報の情報を使うときの注意点
注意報や警報の図表情報はシナリオを作って対応する際に非常に便利な情報源ですが、限界や注意点もあります。
一つはピークとして予測された時間帯が前後にずれる可能性があることや、予測以上に雨が降ること、予測されたほど降らないことなどです。また、そもそも注意報や警報がタイミングよく発表されるとも限りません。予測よりも実況が悪くなれば状況を後追いするような形で警報などが発表されることもあります。
不確実性は気象予測につきものなので、対処法としては実況や目先の予測をこまめに確認していくのがお勧めです。注意報・警報の図表形式で大まかなシナリオを得た上で、そのシナリオ通りに事態が展開しているか現状を見ていれば、シナリオのほころびに早めに気付き、対応を修正していくことができるでしょう。
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