2020/07/09
パンデミックと心のレジリエンス
■「やればできる」は単なる精神論ではない
次は自己効力感を身につけるためのもう一つの方法、「自分または他人を観察して"やればできる感"をつかむ」方法についてです。
一般に「どうせ自分なんか…」という無力感からなかなか立ち直れない人というのは、常に目の前の問題と"今の自分"との間でこう着状態が続いている人です。したがって、まずはそこから一歩下がって自分を振り返ること、つまり自分をリセットすることが大切なわけです。これについても、2つの方法を試してみることをお勧めします。
(1)過去の自分の「成功体験」を思い起こしてみる
逆境にある時は「悲観」のフィルターで心が曇っています。なので、心を落ち着け(感情をコントロールし)、過去の記憶の中からどんな小さなことでもよいので、成功例や困難を乗り越えた例などを思い出し、紙に書き出してください。

例えば「△△ができたのはクラスで自分だけだった」「学習塾のアルバイトでは子どもたちに人気があった」「○○の賞をもらった」「無我夢中でがんばったら、お客さまからすごく褒められた」など(間違ってもいやな思い出や失敗経験をほじくりだそうとはしないこと。余計に悲観的になってしまいます)。

積極的に自分の過去を振り返り、そこから「やればできる」の足跡を可視化することによって、きっと「まんざらでもないなあ」という自信が湧いてくるでしょう。あとはその自信を"今の自分"に当てはめればよいのです。レジリエントな人の多くは、これを実践しています。
(2)他人を観察する
これは「あの人ができるなら自分にもできる」と自分を説得する方法です。「あの人」とは周囲の身近な人でもよいし、本やドラマの登場人物(伝記やノンフィクション、物語の主人公など)でもかまいません。
「社内では目立たないA君が、めざましい成果をあげて表彰されたのだ。努力すれば自分にもできないはずはない」。あるいは新製品を開発する研究者が、プロジェクトが失敗してひどい挫折感を味わったとき、スティーブ・ジョブズの波乱万丈の伝記を読んで勇気をもらう。
また「あの人よりも自分の方ができる」という一種の優越感を呼び醒ます方法も有効です。「自分は会議でミスを連発したが、間違ってもB君のように舞い上がったり感情的になったりはしない。落ち着いて臨めばお偉方を説得できるにちがいない」といったものです。
これらがきっかけとなって、翌日から「あきらめずにがんばろう」という気になれば、それは自己効力感が呼び醒まされたことを意味するでしょう。
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