2020/07/15
知られていない感染病の脅威
SFTSの国外における発生概況
中国
中国の疾病対策予防センターにおいて、初発例が報告された2011年~16年までの中国国内におけるSFTS患者発生数、発生に及ぼす季節の影響、発生地域の地理的特性などの解析がなされています。
患者の数は年々増加し、2016年には1300名以上の患者が発生したと報告されています。患者の99% 以上は河南省、山東省、湖北省、安徽省、浙江省、遼寧省、江蘇省の7省から報告されています。患者の98%は4~10月に罹患しています。南部の省ほど本病に罹患する時期は早く、そして発生する期間も長くなる傾向にあるようです。患者の年齢の中央値は61~63歳、高齢になるに従い死亡率は高くなっています。死亡率は年々下がる傾向にあります。患者の88%が農業従事者です。
11年に報告された中国におけるSFTSの最初の患者は、08年~09年に罹患した原因不明の熱性疾患の患者でした。その後、医療機関に保管されていた過去のさまざまな患者の検査材料について再検討が加えられた結果、1996年にはすでに中国でSFTS罹患者が出ていたことが判明しています。
韓国
2012年に死亡した患者がSFTSに罹患していたと、13年に報告されました。これが韓国での最初のSFTS罹患報告です。
韓国におけるSFTS患者は13年~18年まで、36名、55名、79名、165名、272名、259名と毎年増加しています。近年の韓国におけるSFTS患者数は日本よりも多くなっています。
しかし、韓国においてSFTSが発生する季節、地域、患者年齢、主症状や検査材料の検査結果などについての詳細な解析はなされていないようです。医療機関などに保管されている過去の検査材料が調べ直されていますが、すでに08年には2名、さらに10年及び12年にもそれぞれ2名のSFTS患者が発生していたことが分かっています。
ベトナム
SFTSは中国、韓国、日本の3カ国のみで起きていると考えられてきましたが、最近、ベトナムでもSFTS発生のあったことが報告されています。ベトナム中部のフエ大学附属病院で17年10月~18年3月に熱性疾患で入院した80名の患者から採血してSFTSウイルスの遺伝子検出を試みたところ、中国、韓国、日本への渡航歴のない2名が陽性を示したのです。
陽性を示した2名の患者は、血小板減少や白血球減少、発熱、頭痛、血中肝酵素値上昇などのSFTS患者で認められる症状も示していました。いずれも回復しています。
ベトナムにはSFTSウイルスを媒介しうるマダニが生息しています。また、渡り鳥によりSFTSウイルスが、国外の流行地からベトナムに運ばれたことによって、ウイルスが同国に侵入した可能性のあることが指摘されています。
知られていない感染病の脅威の他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方