日本におけるSFTS発生概況

日本国内での初発例として2013年に報告された山口県在住のSFTS患者から分離されたウイルスの遺伝子を解析したところ、中国のSFTS流行地域で分離されているウイルスとは異なっていました。

つまり、日本で最初に検出されたSFTSウイルスは、最近中国から侵入したのではなく、以前から日本国内には分布していたと考えられました。したがって、日本国内最初の患者は、日本国内で、元々国内に分布していたSFTSウイルスに感染したと解釈されています。

SFTS 患者の発生は、九州、四国、中国、関西地方を中心に報告されていますが、現在では、中部地方の一部、東京都まで拡大しています(図1)。本図には記載されていませんが、鳥取県内での発生も最近起きています。さらに、2020年6月には京都府北部での新たな発生も認められています。

2013年1月~20年5月27日までの感染症発生動向調査によれば、500名以上の罹患者が国内で確認されています。男女比はほぼ1:1で、届出時点の患者は60歳以上が多く、年齢中央値は74歳でした。発病の認められる時期は、例年5~8月が多いのですが、18年は16年と同様、10月まで発生数は減っていません(図2)。

一方、日本医療研究開発機構(AMED)研究班「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に対する診断・治療・予防法の開発及びヒトへの感染リスクの解明等に関する研究」では、14年9月~17年10月に発病した患者133名の詳細な情報に基づいて、SFTSの疫学や臨床情報、予後(病気や病状がそのまま進むと、患者が将来どのようになるか、生存か死亡かを予測すること)に関わるリスク因子が解析されています。

研究対象となったSFTS患者133名中97名(73%)に合併症が認められています。その内訳は、高血圧(47名、35%)、糖尿病(27名、20%)、脂質代謝異常症(15名、11%)、悪性腫瘍(9名、7%)でした。死亡に至った患者は、悪性腫瘍の合併症事例が多かったようです。

また、109名(82%)は発病前2週間以内に屋外活動を行っており、うち70名(53%)は農作業に従事しています。研究期間中の全病例における死亡率は27%(死亡36名)と報告されています。