SFTSウイルスの感染経路

SFTS発生地域に生息するマダニからは、SFTS ウイルスが検出されています。中国の報告では、マダニ類のフタトゲチマダニ(図3)、オウシマダニからウイルスが分離されており、これらのマダニがSFTSウイルスの媒介マダニと考えられています。

 

SFTSウイルスに感染する経路として、親ダニから幼ダニへ世代を超えて垂直にウイルスが受け継がれる「マダニ-マダニ経路」があります。別の経路として、SFTSウイルスを保有するマダニが哺乳動物から吸血する時に、SFTSウイルスを動物に感染させ、さらに感染を受けた動物がウイルスを体内で増殖させ、その結果血中にウイルスが多数存在するウイルス血症を起こし、そのウイルス血症を起こしている動物から別のマダニが吸血することにより、SFTSウイルスを拡散させる「マダニ-ほ乳動物経路」があります。このような複数の感染経路により自然界でSFTSウイルスは維持されています。

多くの場合、SFTS ウイルスを保有するマダニに咬まれることにより人ヘの感染が起きると考えられますが、マダニに咬まれた痕が見当たらない患者もいます。したがって、患者の血液や体液との直接接触による人から人への感染も成立するようです。

動物のSFTSウイルス感染

現時点では、犬、猫(チーターを含む)以外の臨床症状を発現する動物はみつかっていませんが、野生動物ではイノシシ、シカ、アライグマ、タヌキ、家畜では牛、豚、羊、山羊、馬などがSFTSウイルスに感染していることが明らかになっています。

例えば、中国でなされたSFTSウイルス抗体保有調査では、反芻動物の羊(70%)や牛(60%)、次いで鶏(47%)、犬(38%)の順で抗体保有率が高かったという結果が出されています。すなわち、上記の動物の身近な環境下には、常にSFTSウイルスが存在していることが伺われます。また5.3%の犬の個体の血清からウイルス遺伝子が検出されるという報告も出ています。

以上の成績は、動物のSFTSウイルス感染実態の詳細を解明していませんが、想像以上に多くの動物がSFTSウイルスに感染しており、その大部分が臨床症状を出さない不顕性感染を起こしていることを示唆するものです。

ところで、これまで、国内において猫のSFTSが診断されたのは120件です。西日本に限られています。その中で、長崎県(32件)、 鹿児島県(20件)、宮崎県(15件)、佐賀県(10件)で多くの発生が報告されています。SFTS患者発生地域と猫のそれはほぼ重なっています。しかし、必ずしも人のSFTS発生地域で猫での発病事例が報告されているわけではありません。この点に関して、伴侶動物専門獣医師のSFTSを念頭においた入念な獣医療の実施が望まれます。

一方、国内で飼育されている犬におけるSFTS発生は、これまで7頭報告されていますが、全て西日本に限定されています。7頭のみの発生であるため、犬のSFTS罹患に関する詳細な情報は得られていません。現在のところ、猫とほぼ同様であると考えて良いのではないかと考えられています。