2017/11/21
防災・危機管理ニュース

国土交通省は20日、「防災拠点等となる建築物に係る機能継続ガイドライン検討委員会」の第2回会合を開催。災害対策拠点となる庁舎や病院、避難所となる学校といった災害時重要な役割を果たす施設整備にあたって、大地震など災害時に機能を継続できるように構造体の耐震性以外に設備の充実やライフライン途絶の対策などを盛り込んだガイドライン(指針)の試案を提示した。
ガイドライン案では地方自治体など建築主が大地震時に期待される機能を設計者に明確に伝え、設計者も建築主に機能継続性を説明するように呼びかける。構造体は変形を抑え、基礎を傾斜・沈下させないことを重視。国交省の「官庁施設の総合耐震・津波対策計画基準」など既にあるガイドラインが参考になることも盛り込んだ。
非構造部材については過去の被害事例も参考に、余裕を持たせる設計とすることや、什器を床や壁といった構造体に直接固定することが望ましいとした。設備についてはエレベーターの耐震性のほか、停電対策として電源の多重化、井戸や非常用水源の確保といった電気や水の確保、津波で低層部分の浸水が見込まれる場合は浸水予想より高い位置に設備を置くといった対策を求める。
立地についてはハザードマップ活用などで災害リスクが低い立地の選択が望ましいとしつつ、必ずしもリスクを最小化できない敷地とせざるをえないケースもある。前述のように設備を安全な位置に置くなどのほか、津波の高さに気をつけるなどしながら、エレベーター停止に備え重要な部屋を近接させ、低層階に置くことを記載する。
検討委員会には国交省以外に内閣府、厚生労働省、文部科学省、消防庁からも関係者が出席。試案では施設用途ごとに機能継続性の目標をあらかじめ示すことはしないとなっているが、「庁舎と病院、学校では求められるものが違うのでは」という意見が出て、特に避難所となる学校の特殊性を指摘する声が多かった。
今後、案の修正を行い2018年2月にパブリックコメントを募集、同3月にとりまとめを行う予定。東京大学名誉教授の久保哲夫委員長は「学校については(国交省が務める)事務局や文科省と調整したい」と述べ、修正の方向性を示した。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/02
-
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方