2017/12/04
安心、それが最大の敵だ

台風と身を守る備え
台風が毎年日本列島を襲う。台風の進路や強さなどの予測精度は高まっているが、近年、想定外の動きをしたり記録的な大雨を降らせたりしている。温暖化の影響で「極端気象」の増加も心配されている。(以下、朝日新聞9月8日付記事から一部引用する)。
1981年から30年間の平均で、年間に約26個の台風が発生している。8月が一番多い。戦後最大の被害を出したのは、上記のように1959年の伊勢湾台風だ。紀伊半島沿岸や伊勢湾沿岸で高潮や強風、河川の氾濫を起こし多数の犠牲者を出した。
当時、風や気温などの変化をコンピューターで計算する予測方式が導入されたばかりで、台風の「予測進路図」は作られて間もなかった。以降、予測技術や制度は年々向上している。1980年代に入ると、現在の「予報円」が登場し、暴風域も示されるようになった。5日先まで予報でき、予報円に台風が入る確率も70%まであがった。最近では中心気圧や最大風速など「強さ」も5日先まで予測できる技術が開発されている。
予測技術の向上に加えて、避難を促す警報や避難情報も変わってきている。気象庁は災害の恐れのある時、警報や注意報を発令する。2013年には「50年に1度」規模の災害が想定される時に出す「特別警報」の運用を始めた。ホームページで、浸水や洪水といった水害の危険度が地域ごとにわかる「危険度分布図」などの各種情報も提供している。各市町村は洪水や土砂災害など起こりうる災害の種類ごとに、3段階で避難情報を出してきた。2016年の台風10号による豪雨災害で、岩手県岩泉町にある高齢者施設の入居者9人が亡くなった。町は高齢者など手助けが必要な人が避難開始する目安の「避難準備情報」を出していたが、施設側はその意味が理解できておらず、大きな被害が出た。
このため国は、避難情報のうち、「避難準備情報」を「避難準備・高齢者等避難開始」に変更した。危険が迫った時に出される「避難指示」も「避難指示(緊急)」に改めた。それでもなお、極端気象が懸念され、7月の九州北部豪雨や歴代最長に迫った8月の台風5号など、予測が難しい気象現象が続いている。
予測の精度が上がっても、避難情報がきめ細かく発令されても、大切なのは身を守る行動をとるか、どうかだ。極端気象に備えるためにも、避難経路や避難場所の確保、災害時に何をするか整理した行動計画表「タイムライン」の作成、情報の確保方法など、一人ひとりが日頃から準備を整えておく必要がある。「自分のことは自分で守る」ように心がけたい。避難時の準備品をもう一度確認したい。ビニール雨具、下着類、保存飲料水、缶詰、カンパン、手ぬぐい、懐中電灯、タオル、携帯用ティシュ、トイレットペーパー、マッチ(またはライター)、小銭、救急セット、携帯ラジオ、缶切り、スプーン類…。
参考文献:防災専門図書館文献、筑波大学附属図書館文献、「朝日新聞」9月25日付記事など。引用をさせていただいた朝日新聞社に感謝したい。
(つづく)
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