豪雨対策・最前線~国土交通省、中小河川治水対策に本腰~
堤防整備など3年間で3700億円を投入

高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2018/03/19
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
近年、豪雨に襲われると、必ずと言っていいほど中小河川が氾濫・決壊する。災害列島・日本は、今や大河川はもとよりだが、中小河川や渓流の治水対策(河川整備)に本腰を入れる時期を迎えている。中小河川は都道府県の管理の場合が大半であり、治水対策が国よりも遅れがちであった。
国土交通省は2017年12月、政府の2017年度補正予算案に盛り込む主要事業を公表した。この中で、自然災害リスクが高い地域での緊急防災・減災対策を推進するとして、九州北部豪雨を踏まえた中小河川の緊急治水対策に予算を措置する方針を示した。中小建設企業の生産性を高めるため、新規入職人材の育成、中堅人材の技術水準の向上、ITC施工の促進などを支援する。(以下国土交通省公表資料、「新建新聞」2017年12月15日付記事、「朝日新聞」関連記事などを参考にする)。
国交省は補正予算の中で、九州北部豪雨などで被害を受けた公共土木施設の災害復旧と共に、自然災害リスクが高い地域の防災・減災対策に予算を計上している。同省は2017年11月30日、九州北部豪雨を教訓に行った緊急点検の結果を踏まえ、今後3年で全国の中小河川整備に3700億円を投じる「中小河川緊急治水対策プロジェクト」を実施すると発表した。補正予算案には、都道府県の防災・減災対策を総合的に支援する「防災・安全交付金」の予算を追加し、初年度分の事業費を補正予算で手当てする。都道府県の治水対策とともに、直轄の河川・道路・港湾・空港・国営公園の防災・減災にも予算を配分する。
「中小河川緊急治水対策プロジェクト」では、九州北部豪雨の被害を教訓に行った緊急点検の結果を踏まえて、全国の中小河川で、透過型砂防堰堤の整備に約1300億円、河道掘削・堤防整備に約2300億円、危機管理型水位計の設置に約110億円を投じる。初年度分の事業費は、2017年度補正予算案に計上された。
2017年7月の九州北部豪雨での被害を受けて9~11月に2万の中小河川(主に都道府県が管理)を対象に緊急点検を行い、優先箇所を抽出した。2017~20年度の事業費は約3700億円であることは既に記したが、林野庁が実施する治山事業を含めると、総額約4300億円に上る。まず、2017年度補正予算で防災・安全交付金を追加し、都道府県が実施する対策を予算面で支援する。
九州北部豪雨では、大量の土砂・流木の発生が河川の被害を拡大させており、全国の中小河川で土砂・流木の補足効果の高い透過型砂防堰堤(えんてい)を整備する。過去に、土砂・流木の被害を受けた約521河川、745カ所で、透過型砂防堰堤の新設、既設の砂防堰堤の改良、流木補足工の新設などの対策を講じる(例えば長野県では33河川で52カ所)。越水などで度重なる浸水被害が発生した中小河川では、再度の氾濫を防止する河道掘削と堤防整備を行う。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方