感情的な安心の追求が逆にリスクを招く
第6回:コロナ対策から見えてくる日本の危機管理の課題(4)

多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2021/12/28
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
徹底PCR検査がなぜ感染拡大につながったのか。このことを考察する前に「安全第一」から「安全安心」へと推移した功罪について語りたい。
どれだけ科学的に「安全」とされていても、時として人は不安を感じる。ある意味、人間心理としては仕方がないだろう。「安心」できない環境では、人は健全な活動を行えない。従って「安全」だけでなく「安心」も求められるのである。
この「安心」は、「安全」を確立したうえで、「安全」であることの情報を継続的に公開し説明を尽くして納得を得ることで達成できる。しかし、人間心理であるがゆえ、論理でなく感情に左右されるリスクも高い。
東京都の小池知事が就任した直後、豊洲新市場移転問題に待ったをかけたことは記憶に新しい。「安全だが安心ではない」という趣旨だった。結果は、移転時期を遅らせ、そのために多額の費用を浪費し、ほぼ何も変わらなかった。単に不安を煽っただけで何も生み出せなかったとする意見は多い。
この問題は「安心」を「安全」と完全に切り離し、100%感情論で語ったことが大きな誤りなのだ。もちろん目的はほかにあって、取った手段に過ぎないかもしれないが、感情論による「安心」を「安全」を無視して語る悪しき前例となり、手段として定着させてしまった。
この感情論の不安状態では、藁をもつかみたい心理で、誤った「安心」であろうとも、冷静な判断ができずに、藁をつかんでしまう。この誤った「安心」が大きな問題だと、筆者は考えている。
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