2018/06/07
防災・危機管理ニュース
2017年2月16日朝、オフィス用品通販会社・アスクルの首都圏物流倉庫を襲った火災。発災から約12日間燃え続け、延床7.2万m2のうち半分以上を焼失した。なぜここまで延焼が長引き、被害が広がったのか。アスクル火災の原因と対策をとりまとめる国主催の有識者検討会「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会」で座長を務めた、東京理科大学総合研究院・小林恭一教授に聞いた。
※本文中に掲載する画像はすべて消防庁・国土交通省に承諾の上、「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会報告書」から引用しています。
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今回火災が起きた倉庫があるのは埼玉県最南端、三芳インターチェンジから車で5分程の農地の一角にある。鉄骨造3階建て、延面積約7.2万m2という大型物流倉庫だ。
2017年2月16日朝9時頃、1階北西部端材室の廃ダンボール置き場で出火しているのを協力会社社員が発見した。消火器を使って初期消火を試みたが鎮火できず、9時14分に119番通報を行った。9時21分に消防隊が到着。9時30分頃には出火した1階部分の炎は鎮火した。ところがその時にはすでに炎は2階に延焼しており、そこから完全鎮火するまで約12日間かかってしまった。結局この火災で倉庫全体の6割を超える4.5万m2が焼失した。消火活動にあたった従業員2名が負傷した以外は、従業員421人や消防隊に死傷者は出なかったものの、倉庫は使用開始から築5年未満で閉鎖となった。
インターネットを通じて実店舗を持たない商品消費が浸透するなかで、大型化・高層化した物流倉庫が年々増加しており、いまでは8階建て、延床面積30万m2という規模も珍しくない。こうした中で今回のアスクル火災は大規模倉庫を所有・運用する企業にとって大きな課題を突きつける事件となった。物流倉庫の建築・運用のあり方について、学ぶべき点を以下に記す。今後、発注する企業、建築設計者、消防部隊、法規制をする行政など関係者全体で認識を改めたい。
現場と法規制のギャップに落とし穴がある
最も根本的な課題は、大規模物流倉庫の建築需要が増えるなかで、倉庫というものの建物規模や使われ方が従来と大きく変わったことによって、現行の法規制が想定する倉庫の定義とズレが生じてしまっていること。今回のように消防法・建築基準法を守った倉庫が大火災を起こしてしまったのは、そこに大きな問題がある。
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