本社内にある病理標本作製のラボ「さくらぼ」

治療の方向性を決める病理診断に特化した医療機器メーカーのサクラファインテックジャパン(東京都中央区、石塚悟代表取締役社長兼CEO)が感染症BCPにのっとって在宅勤務へ大きく舵を切ったのは2020 年3月。「がん診断を進展させるというミッションのための事業継続」「すべての人の命を守る、感染症の拡大を防ぐ」、この企業目的を達成するためだ。従業員の出社率は当初の40%超から、1回目の緊急事態宣言直後は10%以下に。その後、最も条件を緩和した時でも10%後半を維持している(2022年2月時点)。取り組みを聞いた。
記事中の写真・資料提供:サクラファインテックジャパン

サクラファインテックジャパン
東京都中央区

※本記事は月刊BCPリーダーズvol.24(2022年3月号)に掲載したものです。

事例のPoint

❶在宅勤務を企業目的達成の手段と位置付ける

・いち早くリモート環境を整備して在宅勤務にシフト。企業目的達成のための手段と位置付け、現在も出社率10%後半を維持
 

❷企業の社会的責任としての感染症対策

・医療関係企業の社会的責任として、以前から風疹ワクチンなどさまざまな予防接種に注力。それが感染症対応力の向上に役立ち、新型コロナワクチンの職域接種もスムーズに運営
 

❸コミュニケーション不足の解消へ乗り出す

・出社率が抑えられたことで、従業員のコミュニケーション不足が新たな課題として浮上。さまざまなアイデア・工夫で課題の解決に取り組む

サクラファインテックジャパンは、病理標本を作製する装置の開発・販売から標本作製の技術サポートまでを手がける国内のトップメーカー。そのルーツは江戸時代の薬種商にまでさかのぼる。従業員は約180人で、東京の本社には病理標本作製のラボ(研究所)を構える。ほかに国内5カ所に営業拠点が存在する。

同社が感染症BCPにのっとって在宅勤務へ大きく舵を切ったのは2020 年3月2日。前月末には当時の安倍首相が学校の一斉休校を要請し、都内の1日あたり感染者は1桁だったものの、少しずつ増え始めていた。発熱した社員の出社禁止や中国への出張禁止、セミナーの開催自粛、来客への検温やマスク着用、手指消毒の依頼などの対策は実施済みだった。