事件にはまだ不明な点や不可解な点がある(写真:写真AC)

今回は、本事件の本質的問題に迫りたいと考えている。事件の真相に関してである。

推論であっても真相探求する姿勢で(写真:写真AC)

勘違いしないでいただきたいのは、決して陰謀論の類に与するものではないということだ。むしろ論理的探究においては、感情的な陰謀論は批判する対象であり、安易に語るわけではないことはご理解いただきたい。ただし、現時点でオープンになっている情報は限られており、一定の推論に頼らざるを得ないこともご了承願いたい。

前回の後段でさわりの部分に触れた事件の真相に関して、今回、もう少し踏み込むつもりであるが、この視点で語ることに対するさまざまなよからぬ噂も耳にする。例えば青山繁晴参議院議員はこの問題を追及するなか「そんなことを仰っていると、青山先生のためにもなりませんよ」と諭されたとご本人が語っている。この問題を疑問視するネット系ジャーナリストの方からも、同様のことが語られている。

そのことが真実なのか、私には判断する術はない。少なくとも私ごときが論考しても、おそらくそのようなことは起きないだろうと高を括っている。例示の著名人ほどの知名度はまったくないからだ。事実、これまでも他の論考やSNSなどで語っているが、その兆しはない。

犯行動機は解明されているのだろうか

前置きはこの辺にして、本題に入る。事件の真相を語る入り口は、犯行動機である。犯行動機とは発生原因でもあり、これを明らかにした上でリスクとして明確に対峙し、対策することで、再発防止に結び付くのである。

犯行動機は、犯行当日にリークされたであろう旧統一教会に被害を受けた怨恨説が現時点では定説となっている。従って、犯行動機が間違っていなければ、旧統一教会による被害の救済や、被害を発生させないよう組織を糾弾し活動を制限する動きは間違ってはいない。同時に旧統一教会以外の同様の被害にも普遍的にスポットをあてる必要はあるが。

しかし、これは本当に犯行動機なのだろうか。

宗教被害は今に始まったわけではなく、歴史的には相当古くから存在する。同様の被害を受けた人は数多く存在するだろう。しかし、過去に宗教被害を理由に計画的殺人、ましてや要人暗殺に至った事例を私は知らない。あっても極めてレアケースであろう。

怨恨のターゲットが教会組織直接ではなく、関係あるとする政治家に殺意となって向くこともにわかには信じがたい。怨恨であるならば、ターゲットは本来、直接教会組織に向くだろう。組織壊滅を目標として組織の実態を世間に知らしめるためであれば、それこそ失敗覚悟でも組織を襲撃し騒動を起こすことでも目的は適う。むしろそのほうが、直接的効果があると考えるのが通常ではないだろうか。

また、何といっても実際の被害と犯行の時間差が大き過ぎる。成年し自立した今、母親は現在でも信者である状態で、なぜ今なのかは大きな疑問である。容疑者の過去のSNSでの言動が一部情報として流布しているが、安倍氏に対する批判の姿勢、女系天皇容認など政治的に一定の思想信条を持っていたことは明らかになっている。素直に考えれば、こちらも犯行動機になり得るのだが、理由なく否定されている。

第一の論点は犯行動機(写真:写真AC)

現在の犯行動機を定説とする根拠は、容疑者本人の供述であろう。奈良県警からのリークによるメディア報道である。本来、メディアの姿勢、ジャーナリズム精神があれば、リーク情報だけでなく、真相はどこにあるのか徹底取材し、ある意味勇み足かもしれないレベルの憶測の記事も出てくる状況ではないのだろうか。

少なくとも、容疑者に同情し情状酌量を願い出るなどの行為を助長し、諸悪の根源を旧統一教会として集団で攻撃をする情報環境は、決して健全とはいえない。そのような空気感に流されるのも、危険であることを冷静に判断するべきだろう。