色とりどりのテントの光景は魅力的だが(写真:写真AC)

■テントは魅力だけど…

ハルトが月に1~2回は必ず立ち寄る登山用品店。最近は特に同じコーナーの付近をうろうろすることが多くなりました。そのコーナーというのは「テント売り場」。今日もそこに来ています。

これまで山小屋泊まりを経験してきた彼は「たまにはワイルドな環境の中で一晩過ごしてみたいものだ」と考えたのです。そしてふと、山で見た色とりどりの「テント」の光景を思い出したのでした。

居心地もよさそうなテントの内部(写真:写真AC)

「テントはいいよなあ。プライバシーは確保できるし、こぢんまりとしていて居心地もよさそうだ」。このように考えていると、テントがたまらなく魅力的なアイテムに見えてくるのです。しばらくうっとりと空想にふけっていたハルトでしたが、とつぜん店員さんに声をかけられました。

ハルトが自分の要望を話すと、店員さんはテントのABCについて詳しく説明しながら、テント山行と同程度のダミーの重りを入れたリュックを背負わせてくれました。「割と重いなあ。今の自分にはちょっと無理かも…」というのがハルトの印象でした。もう少し体力をつける必要がありそうだと悟ったのです。

「それなら、こちらはどうです?」と言って店員さんが見せてくれたのは「ツェルト」でした。緊急時に使用する簡易テントのことです。重さは250グラムと軽いし嵩張りもしません。近くの低山でツェルトを何度か試し、慣れてきたら本格的なテントに切り替えては、とのアドバイスです。

■一晩自力で過ごすための必要条件

さて、出発前の準備です。登山用品店の話では、ツェルトは本来緊急野営(ビバーク)に使うものなのでテントのような凝った準備は必要ないとのこと。しかし少なくとも次の3つは用意しておかないと、けっこう不便で寒くてひもじい思いをしますよとも言われました。

まずは「ヘッドライト」。暗くなっても行動に不自由しないための必携アイテムです。スマホのライトなどで済ませようとしてはいけません。次は「暖をとるもの/シュラフ」。山の夜が寒いことはハルトも経験済みです。彼は日頃愛用しているガスストーブと、購入してから一度も使っていないシュラフ(寝袋)を用意しました。「やっとシュラフを使う機会ができた。これで一晩温かく過ごせるぞ」

最後は「食料」です。山小屋泊まり山行での夕食や朝食は、これまで山小屋がつくってくれていたので、ハルトは献立やメニューといったものをあまり意識したことがありませんでした。今回はシンプルなビバークではありますが、コンビニのおにぎりや行動食のほかにインスタントラーメンやソーセージを持っていくことにしました。

ヘッドライト、シュラフ、食料などを用意して野宿にトライ(写真:写真AC)

こうしてハルトは、さっそく近郊の山で一晩泊まってみることにしました。2時間かけて奥多摩の山の稜線上にあるテント場にやってきましたが、あいにくの曇り空のためか人気はなく、ほかにテントも見当たりません。彼は少しぎこちない手つきで、店員さんから教わったビバークの手順を思い出しながら準備にとりかかります。