2023/01/04
独自調査
リスク対策.comは、企業・組織が自然災害や感染症、サイバー攻撃、大規模な事故・事件に備えるためどのような訓練・演習をどの程度行っているのかを明らかにすることを目的に、インターネットによるアンケート調査を実施した。第2弾の結果報告となる今回は、各社が訓練において重要だと思う点と、自社における課題をどう考えているかを解説する。
従業員101~500人(23.9%)が最も多く、1001~5000人(20.6%)、501~1000人(17.7%)の順となった。業種は製造業が37.7%で突出して高く、本社所在地は東京都が51.3%で過半を占めた。
BCP の構築状況は「BCPを策定していない」が9.4%、「策定途中」が12.9%で、大半がBCPを策定済みだった。さらにBCP策定済の企業のうち定期的に見直しを実施している企業は36.1%、非定期的に見直しを実施している企業が48.1%、見直しをしていない企業は15.8%だった。
また、リスクマネジメントやBCP、防災部門の設置状況は、全体の55.2%が兼務での担当部門を持ち、次いで専属での担当部門があるが21.9%だった。これらのことから、リスクマネジメントやBCPにかなり力を入れている企業が本アンケート調査に回答している。
課題は「評価項目の明確化」や「十分な時間」
アンケートでは「効果的な訓練・演習を行う上で、どのようなことが重要だと思うか」を質問。リスク対策.comが過去に行った取材や内閣府の「企業の事業継続訓練の考え方」(平成24 年)などを参考に、「訓練・演習の手法を理解すること」「参加者が訓練の必要性を理解すること」「目的を明確にすること」など訓練のポイントと思われるもの17 項目をリストアップし、「1.重要ではない」「2.あまり重要ではない」「3.どちらとも言えない」「4.ある程度重要」「5.とても重要」の中から最もあてはまるもの1つを選んでもらった。
1の回答を1点、5を5点というように加重平均を算出したところ、最も重要だと思うものは「目的を明確にすること」で4.76ポイント、次いで「参加者が訓練の必要性を理解すること」と「訓練で出た課題を改善につなげること」(それぞれ4.75)、「訓練後に振り返り(検証)を行うこと」(4.65)と続いた。最も点数が低かったのは「無駄な時間をかけず短時間で行うこと」(3.72)となった【グラフ1】。
続く質問では「現在、貴社が行っている訓練・演習について、どのようなことをどの程度課題と感じているか」を聞いた。前出の各質問項目を「訓練・演習の手法を理解すること」→「訓練・演習の手法を理解してない」というように否定文に変え、それぞれ「1.あてはまらない」「2.あまりあてはまらない」「3.どちらとも言えない」「4.ある程度あてはまる」「5.とてもあてはまる」の中から1 つを選んでもらった。
その結果、最も課題が大きかったのは「訓練の評価項目が明確になっていない」と「十分な時間がとれていない」でいずれも3.30ポイント。次いで「中長期のビジョンがない」(3.22)、「訓練・演習の手法を理解していない」(3.19)が続いた【グラフ2】。
この質問の結果を反転させ(つまり1が最も課題が大きく、5がほとんど課題がないと置き換え)、再度、平均点を算出し、前出の「訓練においてどのようなことが重要と思うか」の結果との差を導き出したところ、最も差が大きかったのが「参加者が訓練の必要性をしっかり理解すること」と「訓練で出た課題を改善につなげること」で、差はともに1.9ポイント。次いで「目的を明確にすること」(1.7)、「参加者のモチベーションを高めること」「訓練後に振り返りを行うこと」が1.6 ポイントと続いた【グラフ3】。
これらの項目は、効果的な訓練を行う上で重要であると認識している一方で、自社の訓練での課題と認識している乖離が大きいものになる。
独自調査の他の記事
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方