要介護者によってコミュニティーの力が引き出される(写真:写真AC)

要介護者のADLと避難行動

要介護者の日常生活動作(ADL)について、厚生労働省は2010年に大規模調査を実施している。85歳で比較すれば、介護非認定の一般高齢者のADLが98.6であり、ほとんど自分で日常動作ができるのに対し、要介護者の平均は56.9となっている。

画像を拡大 図1 ADL(日常生活動作)平均得点 出典:日常生活圏域ニーズ調査モデル事業・結果報告書 平成22年(2010)10月厚生労働省老健局

これだけでは、災害時に避難行動がとれるかのイメージが湧きにくいだろう。詳しく項目別に見ると、次のようになる。

・50m以上歩けない要介護者は約7割
・階段を昇り降りできない要介護者は8割
・大便の失敗がある要介護者は6割
・小便の失敗がある要介護者は7割

これを見ると、要介護者にとって単独での避難行動や避難生活がいかに困難か、想像に難くない。

すなわち、同じ85歳の高齢者といっても極めて個人差が大きい。下の写真は津波避難訓練の状況だが、車椅子の一番左が95歳の男性、支援している男性はなんと85歳、その横が86歳の女性だ。大変なこととは思うが、介護非認定の一般高齢者には避難誘導して支援者になれる力があることを実証してくださった。

2022年10月29日 酒田市総合防災訓練 筆者撮影

この訓練では、ようやく到達した民間ビルの指定避難所に3段の階段があった。

2022年10月29日 酒田市総合防災訓練 筆者撮影

さすがに85歳の支援者が要介護者をおんぶするのは大変で、ゆっくりと杖を使って上がってもらっている。津波避難は時間との勝負なので、できれば階段のバリアフリー化や、スロープとなる板を置いてもらえるなら随分助かる。

これが訓練の大事なところで、事前にリスクを把握することで改善を行い、本番での安全度を高めることができる。