山好きにとって、山は眺めてよし、登ってよし、探してよし(写真:写真AC)

■ネットに相談すれば万事解決?

山好きの人にとって、山は眺めてよし、登ってよし、そして「探してよし」の世界です。「探してよし」とは、今度はどの山に登ろうか、今度登る山はどんな山なのだろうと、いろいろ調べることの楽しみがあるということです。

山の情報の収集もスマホやパソコンで行う時代(写真:写真AC)

ハルトも最近、「探してよし」の世界にはまりつつあります。昔なら山岳雑誌や登山地図を買ったり、図書館から山岳ガイドを借りてきたりして、限られた情報をなんとか寄せ集めたものですが、今日はそんな手間をかける必要はありません。手元のスマホをひとなで、もしくは机上のパソコンをちょっとクリックするだけで、あり余るほどの山の情報が目に飛び込んでくる時代です。

いわゆる登山情報サイトやブログの投稿記事のことです。こと細かな山行記録といっしょに豊富なスナップ写真もついて、まさに至れりつくせり。登山コースはラクか、アブナイところはないか、眺めはよいか、山小屋はどんな様子かなどなど。知りたい情報のほとんどはネットが明らかにしてくれる。この便利さはクセになります。

しかし、ここにこそ、ちょっとしたリスクが潜んでいることも確かです。

ある日会社の休憩室で、スマホを手に山の情報探しに熱中しているハルトに気づいたヒデさん(会社の山の先輩)は、少しあきれ顔でこう声をかけました。

■こんなはずでは!的な体験、なきにしもあらず

「今度はどこの山を目指しているんだい? 僕の若い頃と違って今はネットがすべて解決してくれるから、ほんと便利だよね。だがネットの便利さをあてにし過ぎると、こんなはずでは!…みたいなことにならないとも限らんよ」

「あっ先輩、こんにちは。こんなはずではって、どんな…?」とハルト。

「例えば、山は季節や気象の変化、時の経過で違う表情を見せるよね。あるブログの投稿者が、すばらしい景色と山歩きを堪能しました!と書いてあっても、いつもその通りとは限らない。登ってみたら笹やぶだらけ、地面はぬかるみ三昧、みたいなこともある。最近は台風や地震などの自然災害もよく起こるから、地図上では初心者向けのコースのはずが、行ってみたら荒れ放題で通れなくなっているところもある。閲覧した投稿記事がいつのものか確認してから行かないとそんなことが起こりかねない」

さまざまな条件やものの見方によって印象は変わってくる(写真:写真AC)

「体力やスキルの違い、その時々の体調の変化も無視できないな。同じ山でも、絶好調な気分で登った人と、仕事の疲れを引きずって登った人とでは、その印象はだいぶ違うだろう? 投稿者が『ヤバイくらいに歩きやすかった』と書いていても、ハルトくんにとっては険しい道かもしれないよ」

「そしてちょっと注意が必要なのがトレイルランナーたちの記録だ。彼らが書いた記録を読むと、一般の登山者にとっては長くてハードなコースが、短時間で歩けるものすごく容易なコースに見えてくる。中には自分がトレイルラン経験者であることを明示せずに山の記録をアップしている人も少なくないから、コースの距離感や難易度をうっかり見誤ってしまうことにもなりかねないのさ」