マイナンバートラブルが映し出す本当の問題
第41回:IT後進国から脱却できるのか(1)
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2023/06/14
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
本来は、今回から巷をにぎわせているAI(人工知能)に関して論じるつもりであった。しかしその前に、直近で発生しているマイナンバーに関するあまりにも杜撰で目を覆わんばかりのセキュリティ・インシデントに関して語るべきだろう。根底には共通する問題性があり、日本社会が乗り越えるべき大きな課題だと考えるからだ。
このインシデントはそれ自体も問題だが、その対応や説明、そして報道のされようもあまりに稚拙で深刻だ。それは日本が国家としてIT後進国に甘んじている原因にも通じると感じている。このようなレベルの反応では、再発防止によるレベルアップは難しいと言わざるを得ない。
大前提の原理原則をいうと、システムにはバグはあり、ゼロにはならない。そしてシステムは黙って動くだけのものではなく、データの登録・メンテ・出力、サーバの監視、ログのメンテ、不具合情報収集と修正処理などの運用が必要不可欠であり、この運用にもミスやロスはつきもので、決してゼロにならない。
これらのことは、あらゆる創造物に共通の事象であり、万物にエラーは内在している。システムに限った話ではないが、なぜかシステムは特別で完全であるべきとの神話がまかり通り、形のないものと思い込み、見ようともせずに毛嫌いしてはいないだろうか。
逆に専門家と称しながら、その本質を理解していない発信も多い。単なるITヘビーユーザー、デザイン制作経験者、小規模個人システム開発経験者などに過ぎず、本来的なシステム開発・運用経験やプロジェクト運営の本質を理解していないのではと思わざるを得ない解説が多いのだ。
本質論をまともに説明しても、ニュースにする側がまったく無理解で、切り取りによる誤誘導がひどいので無駄だとの意見もあるかもしれない。が、それでも本質的な発信を続けることに本来は意味があるはずだ。
そして極めつけは、主体者であるべきデジタル庁の発信や対応だ。本当にデジタルに精通しているのか疑わざるを得ず、日本として致命的とも感じる。
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