本当に協力業者は駆けつけてくるのか?
第5回:「後ろ盾」があっても無理なものは無理

荻原 信一
長野県松本市出身。大学卒業後、1991年から大手IT企業に勤務。システム開発チームリーダーとして活動し、2005年にコンサルタント部門に異動。製造業、アパレル、卸業、給食、エンジニアリング、不動産、官公庁などのコンサルティングを手がける。2020年に独立。BCAO認定事業継続主任管理士、ITコーディネータ。
2023/12/26
ざんねんなBCPあるある―原因と対処
荻原 信一
長野県松本市出身。大学卒業後、1991年から大手IT企業に勤務。システム開発チームリーダーとして活動し、2005年にコンサルタント部門に異動。製造業、アパレル、卸業、給食、エンジニアリング、不動産、官公庁などのコンサルティングを手がける。2020年に独立。BCAO認定事業継続主任管理士、ITコーディネータ。
本連載は、BCPで規定した計画と現実との間に生じるギャップを抽出。多くの企業に共通の「あるある」として紹介し、そうしたギャップが生じる原因と、そこへの対処を考えています。第1章として「リソース制約と事業継続戦略の検討・見直し」のなかに潜む「あるある」を論じていますが、今回は「外部リソースの制約」を取り上げます。
・ウチは「親方〇〇」だから(関西大手・業種非公開・情報部門)
関西のある大手企業の事例です。とても公共性の高い企業と申し上げるにとどめ、業種の公開は控えさせていただきます。
その企業はかなり古い自社社屋の一角をサーバールームとして、たくさんのサーバーで大規模な情報システムを運用していました。各地の拠点のサーバーはデスクの下などに置かれていました。また、本社と拠点のほとんどのサーバーは旧世代のオペレーティングシステムがそのまま使用されていました。
サーバーの設置場所や管理は適切ではない状態であり、セキュリティーの面でも不安の多い状態でした。大規模な災害にしろ、セキュリティーインシデントにしろ、何かあったら復旧にはかなりの時間を要することが容易に想像できました。
正直なところ、どこから何の話をしたものか迷ってしまいました。以下、情報部門の部門長の方との会話です。
私のような外部のコンサルタントに、最初にキツイいい方で何かひとこと先制パンチを見舞っておきたい気持ちもわからないわけではありません。
サーバールームの耐震補強や設備の冗長化、免振装置の導入、また外部への移転を行うためには、止められないシステムをどう切り替えるのかを計画することが重要となりますし、情報システム部門だけで決定できることではありませんから、事業部門との細かい調整も必要となります。
それには大きなコストがかかることは確かで、予算の確保も大きな課題。いま会ったばかりの外部の人間にいわれたくない気持ちもよくわかります(ちなみにこの部門長の方とは、その後きちんと前向きなお話ができるようになりました)。
自社の経営体質を自嘲的に表現したうえで、再び『あなたが気にすることではない』とおっしゃっているのですが、「日の丸」の力を過信しすぎです。図に注目してください。
●南海トラフ巨大地震の全壊・消失地域
この事例の舞台となった場所に★をつけてあります。★印の南側を中心に、赤色(1キロ四方で500棟以上が全壊・焼失)や紫色(同200棟~500棟が全壊・焼失)の全壊・焼失地域が大きく広がっていることがわかります。また、全壊・焼失が多い地域が人口密度の高い地域と重なっていることもわかります。
●大阪府地域メッシュ統計からみた人口・世帯数
このような地域から★にあるサーバールームに向かってわーっと駆けつけることが本当に可能でしょうか。
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