情報に踊らされないための訓練が要る
第56回:価値観の棚卸しの必要性(2)

多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2024/01/30
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
新年早々、大地震が能登半島を襲った。被災された方々に心からお見舞いを申し上げるとともに、1日も早く日常を取り戻されることをお祈りします。
そして、災害に付きもののデマも多数拡散された。また、実態を顧みない、ある意味いいがかりにも近い批判の数々も聞こえてきた。確かに数々の問題事項、課題もあるが、それらを改善するためには問題の本質に目を向ける必要がある。だが、現実は本質とはかけ離れた情報拡散が多く、冷静で是々非々の思考を妨げている。
日本社会は特に、過去に議論してきたことの棚卸しや、その後に起きた現実と照らし合わせた振り返り・評価、反省が極めて不得意で、その場の感情論が支配する傾向があると感じている。いわゆるPDCAをまわしながらスパイラルアップを目指すビジネスの世界でのマネジメントの常識が、一般社会で活用できていないという問題を直視する必要があるだろう。
それらを踏まえて、今回の震災に対して、一部で起きた政府の対応が遅いとの非難に関して整理した情報を羅列してみる。
・地震発生1分後総理官邸に対策室設置
・5分後、被害状況確認、救命救助に全力で取り組む旨の総理指示
・20分後、自衛隊による航空偵察
・35分後、石川県馳知事より自衛隊への災害派遣要請
・1時間後、総理官邸入り
・4時間後、特定災害対策本部開催
・発生日中、周辺8府県緊急消防援助隊、警視庁特別救助隊派遣
・発生翌日、東京消防庁ハイパーレスキュー隊派遣
これらはまとまった情報ではなく、かき集めたものなので、若干の間違いや齟齬はあり得るだろうが、それでもこれを見る限り対応が遅いということはないだろう。
それでは何を根拠に批判情報が発信されたのだろうか。類推ではあるが、過去の震災時と比較しての自衛隊部隊の結果としての派遣人数などから単純に語っていると想像される。しかし、それは過去の震災の発生状況、個別の状況の違いによるものではないだろうか。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
カムチャツカ半島と千島海溝地震との関連は?
7月30日にカムチャツカ半島沖で発生した巨大地震は、千島からカムチャツカ半島に伸びる千島海溝の北端域を破壊し、ロシアで最大4 メートル級の津波を生じさせた。同海域では7月20日にもマグニチュード7.4の地震が起きており、短期的に活動が活発化していたと考えられる。東大地震研究所の加藤尚之教授によれば、今回の震源域の歪みはほぼ解放されたため「同じ場所でさらに大きな地震が起きる可能性は低い」が「隣接した地域(未破壊域)では巨大地震の可能性が残る」とする。
2025/08/01
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方