「推し」を応援するファンの消費活動に注目した「推し活マーケティング」が多くの企業の取り入れられている(イメージ:写真AC)

BBCの新たな報道

この連載でも再々取り上げた「ジャニー喜多川性加害問題」にまた動きがありました。

問題が注目されるきっかけになったBBCのドキュメンタリー番組「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」の続編として、性加害告発者たちに加えられた誹謗中傷の問題を取り上げた番組「捕食者の影 ジャニーズ解体のその後」が3月30日に公開されたことです。

その前、3月28日に5分間のダイジェスト版が公開され、その中で、ジャニー喜多川だけではなく事務所スタッフ2名も性加害を行っていたという話が出てきました。すぐにSMILE UP.(旧ジャニーズ事務所)の被害補償特設サイトに、本事象を認識していて「外部専門家による再発防止特別チーム」の報告書にも記載されているとの声明(「本日のBBCニュースについて(2024/03/28)」)が出ました。

90年代にスタッフによる性加害があったという週刊誌報道は見た覚えはあるけれど、記者会見の時にその話は出ていたっけ?と首を傾げていたら、読売新聞が「性加害を行ったのは、十数年前まで在籍した男性と昨年9月まで在籍していた、東山紀之社長の元マネージャー」「同社はこれまでの記者会見などで、スタッフによる性加害の詳細については言及してこなかった」(※)と報じていました。
※読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240328-OYT1T50235/

よりによって東山社長の元マネージャーが性加害をしており、しかも去年の9月まで在籍していたという状況。「当該スタッフについては、昨年9月までに関係法令及び就業規則等に従って厳正に対処しました」と声明にありますが、ここはどのような処分を行ったのか、公開すべきではないかと思いました。

告発者に対する誹謗中傷への対応の鈍さ

5分間のダイジェスト版は、前半が誹謗中傷を受けて自殺された方のご遺族へのインタビュー、後半が東山紀之社長へのインタビューでした。ご遺族へのインタビューでは、10月に虚偽の被害申告をしている者がいると同社が声明を出してから、誹謗中傷被害が激化したという話が出ていました。以下、抜粋します。

アザー記者:直接語りかけていただきたいと思っているんです。(告発者が)真実を語っていないかのようなことをオンラインで書く人たちに。そういう人たちに何とおっしゃいますか。

東山紀之社長:言論の自由もあると思うんですね。僕は別に誹謗中傷を推奨しているわけでもなく、多分その人にとってはそれが正義の意見なんだろうなと思う時もあります。僕自身がそれを言うことによって誹謗中傷が増える可能性もあるので。

アザー記者:あなたの会社がそういう風潮を強めているかもしれないと心配することはありますか。

東山紀之社長:僕はそのようには感じていません。やはりきちっと被害を受けた方に向き合うという意味では、ちゃんとこちらも毅然とした態度を取るべきだなと思っています。

(書き起こしは筆者)

インタビューのロングバージョンでは、この会話の前の部分で、被害者からも、本当に被害を受けた人に補償をしてほしいという声が出ていると、東山社長は説明しています。

これを聞いて、私は「誹謗中傷は許容できない」となぜ言わないんだと思いました。最初に言うのが「言論の自由もある」では、誹謗中傷者に一定の理解を示しているととらえられても仕方ありません。

ファンによる誹謗中傷を許容しているともとれる発言(イメージ:写真AC)

発言全体を見れば、ファンが告発者を傷つけるのを許容している、もっと言えば自分たちの代わりに告発者たちを攻撃させていると解釈することもできてしまいます。案の定、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」は反発し、複数のメディアも批判しています。

ネットの誹謗中傷も人権侵害の一つですから、当然、企業は抑止する義務があります。このような発言をされては、政府の「ビジネスと人権」(※)の考え方からすると、広告主も戻るに戻れません。
※「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2022/09/20220913003/20220913003-a.pdf

旧ジャニーズ事務所の折々の対応を見るにつけ、彼らはPRは得意でも、パブリック・リレーションズをわかっていないんだろうなと思っていましたが、いまだにそのままのようです。