窃盗罪・詐欺罪・横領罪とは
窃盗罪・詐欺罪・横領罪の特徴・異同について
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2024/04/11
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
犯罪についての報道がされる際には、その罪名も合わせて報じられることが常であり、窃盗罪・詐欺罪・横領罪といった言葉をよく目にされ、耳にされると思います。これら3つの犯罪は、個人の財産を侵害する「財産犯」として、代表的なものです。
今回、これら3つの犯罪の特徴と異同に着目してご説明することにより、今後ニュースをご覧になる際や、残念ながら組織内で犯罪の疑いが発生した際などのご参考になればと思います。
刑法235条において「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」とするとされ、窃盗罪になる行為として「窃取」が規定されています。
ここでいう「窃取」とは、「他人の占有する財物を、当該他人の意思に反して、自己又は第三者の占有に移転させること」であると考えられています。本稿の主題との関係で重要なのは、犯罪の客体たる財物の占有が、占有者(被害者)から、その意思に反して、自己(犯罪者)または第三者に移転しているということです。
占有者の意思に反する占有移転こそが「窃取」の核心であるといえます。いわゆる「スリ」や「万引き」なども「窃取」の典型的な行為になります。ちなみに、意思に反する占有移転につき、暴行又は脅迫を手段として用いた場合が「強取」となり、強盗罪(刑法236条)の実行行為になります。
刑法246条1項において「人を欺いて財物を交付させ」ることが詐欺罪として規定されています。これにより、❶人を欺く行為(欺罔<ぎもう>行為)→❷相手方(被害者)の錯誤→❸錯誤に基づく財物の交付行為→❹財物の移転という一連の流れが詐欺罪の成立には必要であると考えられています。
たとえば、❶犯罪者が交通事故の示談金のために300万円が必要であると偽り、❷それを被害者が真実であると誤信し(錯誤に陥り)、❸その錯誤に基づいて300万円を被害者が犯罪者に渡し、❹その300万円を犯罪者が受け取った、といった事実の流れが必要になります。
なお、財産上の利益が客体になる場合については、刑法246条2項により規定されています。
このように、占有の移転という点で、窃盗罪と詐欺罪とは共通しており、両罪は「移転罪」に分類されています。
一方で、その占有の移転が、被害者の「意思に反する」場合が窃盗罪であり、被害者の「瑕疵ある意思に基づく」場合が詐欺罪ということになります。窃盗罪のような犯罪を「盗取罪」といい、詐欺罪のような犯罪を「交付罪」といいます。
なお、刑法246条2項の詐欺罪の場合には、占有の移転とはいわずに、利益の移転といいます。
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