2024/06/12
防災・危機管理ニュース
レジリエンス、BCPの企業調査

大手コンサルティング会社のKPMGコンサルティングは6月11日、企業のレジリエンスやBCPなどの取り組みを調査した「レジリエンスサーベイ2024」を発表した。国内の上場企業などを対象にした同様の調査としては10年ぶりの実施。地政学や人権侵害などのエマージングリスクや金融業界がリードしているオペレーショナル・レジリエンス関連も加わった。アンケートを依頼した約4000社のうち、176社から有効回答を得た。
10年ぶりの調査

同社執行役員の足立桂輔氏は10年の変化を「レジリエンスの追求が企業戦略そのもととして位置づけられるようになった」と語った。
調査では約88%の企業がBCPを策定していると回答。10年前と比較すると10%を超えて上昇した。策定の理由には「顧客からの要望」を挙げる企業が56%に及んだ。
一方、海外拠点のBCPとなると取り組みは低くなった。着手できている企業は28%。必要性は78%が感じているが、半数は着手できていない。課題には本社としてどこまで統括するのか不明確な状態が最も高かった。

インシデントが発生した際の損失額は、約半数が1000万円以上を挙げた。損失の原因は新型コロナウイルスや情報システム障害、風水害など。事業が中断した期間は1日未満が最も多く、1週間から1カ月未満が続いた。

訓練では、初動訓練は精力的だが、事業継続に関連する訓練がなされていないことが浮き彫りに。前者の安否確認や避難訓練などは高いが、後者のバックアップシステムへの切り替えや暫定対応手順に基づく業務実施訓練のような事業継続関連は半数にも至っていなかった。

注目度が高まっているエマージングリスクである地政学リスクや人権侵害リスクは、60%以上の企業がBCPで対応すべきリスクと認識しているものの、実際に対策済みなのは約10%にとどまった。

同社アソシエイトパートナーの土谷豪氏は、この10年でBCPの複雑性が高まったとして「例えば、リモート勤務。これが当たり前になった結果、個人が会社に抱くロイヤリティに懸念が出ている。だからこそ従業員ひとりひとりにBCPは重要だと訴えることが、今、必要になっている」と語った。
- keyword
- KPMG
- BCP
- BCM
- オペレーショナル・レジリエンス
- レジリエンス
- エマージェンシーリスク
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/02
-
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方