2024/12/14
防災・危機管理ニュース
【ソウル時事】韓国国会は14日、「非常戒厳」を3日に宣言した尹錫悦大統領の弾劾訴追案を可決した。全300議員が出席し、賛成が204票、反対が85票、棄権が3票、無効が8票だった。与党「国民の力」は反対する方針だったが、12人が賛成し、棄権や無効を含めると計23人が造反したもようだ。
韓国大統領の弾劾訴追は、盧武鉉、朴槿恵両氏に続き、史上3人目。尹氏は職務停止となり、韓悳洙首相が代行する。憲法裁判所が180日以内に弾劾事由を認め罷免すべきか判断する。
尹氏は内乱を首謀した疑いで捜査対象となっている。検察は14日、内乱容疑で、尹氏の側近である呂寅兄軍防諜(ぼうちょう)司令官を逮捕した。
尹氏は2022年5月に就任し、元徴用工問題の解決策を発表するなど対日関係の改善に取り組んだ。仮に罷免を回避できたとしても、尹氏の求心力は極めて低下しており、来年に国交正常化60周年を控える日韓関係への影響は避けられそうにない。
弾劾案は、最大野党「共に民主党」など野党6党が12日に再提出。戒厳宣言後の国会への軍投入や一切の政治活動を禁止する布告が、戒厳下での国会活動を認める憲法に違反したなどと指摘した。尹氏は可決後、国民向け談話を読み上げ「私は決して諦めない」と憲法裁で争う考えを示し、「最後の瞬間まで国家のために最善を尽くす」と強調した。
韓首相は「国政の安定的な運営に全力を尽くす」と表明。韓国政局が混乱する中、「誤った判断に基づく無謀な挑発」を北朝鮮にさせないように、警戒態勢の強化を軍に指示した。
世論調査で弾劾に賛成する国民は7割以上に上る。共に民主党の李在明代表は「国民が新しい歴史をつくっている」と評価。同党幹部は「偉大な国民の勝利だ」と述べた。
可決には全議員の3分の2以上の賛成票が必要。野党や無所属などを合わせると192人で、与党から8人以上の賛成が出るかどうかが焦点となっていた。可決後、大統領府は弾劾訴追議決書を受理し、尹氏の職務が正式に停止された。
7日に行われた1度目の弾劾案採決では、与党のほぼ全議員が投票に参加せず、廃案に追い込んだ。ただ、尹氏は12日の談話で「弾劾であれ捜査であれ堂々と立ち向かう」と主張。これに反発した与党の韓東勲代表は弾劾案に賛成すべきだとの立場に転じ、可決に向けた動きが広がった。可決後、韓代表は「結果を重く受け止める」と語った。
〔写真説明〕14日、ソウルの韓国国会で開かれた大統領の弾劾訴追案採決の本会議(EPA時事)
〔写真説明〕14日、ソウルの韓国国会で、大統領弾劾訴追案の可決を宣言する禹元植議長(EPA時事)
(ニュース提供元:時事通信社)


防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/24
-
-
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方