2025/02/05
防災・危機管理ニュース
【ワシントン時事】米首都ワシントン近郊で旅客機と軍用ヘリコプターが空中衝突した事故から5日で1週間となった。原因究明は緒に就いたばかりだが、管制の人手不足を指摘する声が上がっている。衝突事故の2日後には東部ペンシルベニア州フィラデルフィアでも小型機が墜落した。航空機事故が相次ぐ中、「空の安全」に懸念が広がっている。
地元当局などは4日までに機体の残骸を回収するとともに、67人全員の遺体を収容した。運輸安全委員会(NTSB)のこれまでの調査で、事故当時ヘリが制限高度を超え、約300フィート(約91メートル)の高さを飛行していたことが明らかになっている。ただ、管制官による誘導が遅れた理由などは不明のまま。NTSBは事故から1カ月後をめどに暫定的な報告書をまとめる方針だ。
トランプ大統領は事故直後から、連邦航空局(FAA)の「多様性、公平性、包括性(DEI)」に基づく雇用とそれを推進した民主党政権の責任だと根拠を示さずに主張した。トランプ氏は4日にも「管制塔には知力に欠陥のある人たちが配置されている」と語った。
しかし、事故当時、管制塔では2人の管制官で担うべき業務を1人でこなしていたことが判明。管制官の慢性的な人手不足が叫ばれる中、トランプ氏が就任直後から政府職員の大量解雇を進めてきたことが拍車を掛けた可能性も指摘されている。
ブティジェッジ前運輸長官(民主党)は「トランプ氏の初仕事は、空の安全を守ってきた主要職員を解雇することだった」と批判した。全米航空管制官協会(NATCA)も「管制官は人種や性別を問わず、よく訓練され、高い能力を持ったプロだ」と反論し、「管制官の人手不足解消と管制システムの近代化が安全と信頼の回復に役立つ」と訴えた。
事故は1月29日にロナルド・レーガン空港周辺で発生。両機はいずれも空港の近くを流れるポトマック川に墜落した。米国で多数の死者を伴う航空機事故は、東部ニューヨーク州で50人が死亡した2009年の旅客機墜落事故以来だった。
〔写真説明〕米ワシントン近郊の航空機事故現場で、機体の残骸を回収するクレーン=3日(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

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