トランプ関税の二つの顔
経済合理性と政治性の交錯
和田 大樹
国際政治学者 株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学法学部講師。専門分野は国際安全保障、国際テロリズム、経済安全保障など。大学研究者として安全保障的な視点からの研究・教育に従事する一方、実務家として海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務に従事。
2025/05/07
地政学リスクを読み解く
和田 大樹
国際政治学者 株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学法学部講師。専門分野は国際安全保障、国際テロリズム、経済安全保障など。大学研究者として安全保障的な視点からの研究・教育に従事する一方、実務家として海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務に従事。
トランプ政権が推進した関税政策、通称「トランプ関税」は、米国経済と国際貿易に大きな波紋を広げた。この政策は、対象となる品目や国によって異なる性格を持ち、大きく「特定品目関税」と「特定国関税」に分けられる。特定品目関税は、国内産業の保護や貿易収支の改善を目指す経済合理性を強く反映する。一方、特定国関税は、地政学的対抗や国内政治への訴求を優先し、政治性が際立つ。ただし、両者は完全に分離するものではなく、動機が重複する場合もある。本稿では、これら二つの関税の特徴と影響を分析し、その背景を明らかにする。
特定品目関税は、鉄鋼、アルミニウム、太陽光パネルなど特定の製品群に課される関税である。この関税は、米国の製造業を安価な輸入品から守り、国内の雇用や生産を維持・拡大することを主眼とする。例えば、鉄鋼やアルミニウムへの関税は、海外からの大量輸入によって圧迫されていた米国の鉄鋼産業を立て直す狙いがあった。実際に、関税導入後、国内の鉄鋼生産は回復傾向を示し、関連産業の雇用も増える兆しが見られた。このように、特定品目関税は、産業競争力の強化を直接的な目標とし、経済的効果を重視する。
また、特定品目関税は、貿易赤字の是正に寄与する。米国は長年、製造業製品の輸入超過に悩まされており、特に中国や欧州からの輸入が問題視されてきた。トランプ政権は、関税を通じて輸入品の価格を上げ、国内生産を促すことで、貿易収支の均衡を図った。鉄鋼やアルミニウムの輸入が抑えられた事例は、この政策が一定の成果を上げたことを示している。さらに、太陽光パネルへの関税は、中国製品の市場支配を弱め、米国や他の地域での生産を後押しした。こうした動きは、グローバルなサプライチェーンの再編を促し、長期的な産業の自立を志向する。
ただし、特定品目関税にも課題はある。輸入品の価格上昇は、国内の製造業や消費者にコストを転嫁し、物価や生産コストの上昇を招く。経済合理性を追求する一方で、こうした副作用を軽視することはできない。それでも、国内産業の保護と経済的利益を優先する姿勢は、特定品目関税の核心にある。
地政学リスクを読み解くの他の記事
おすすめ記事
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/06/30
W杯に水を差したDAZN契約プラン表示が原因で大炎上
世界最大のスポーツイベントであるサッカーのW杯が6月12日に開幕。日本は1勝1分けで決勝トーナメント進出を大きく引き寄せている。その裏でW杯の視聴契約を巡ってSNSで大炎上していたのが、スポーツコンテンツの配信会社であるDAZNだ。W杯の全試合を視聴できる年間契約プラン表記に問題があり、13日にお詫びを発表した。しかしその対応も反感を買い、炎上は継続。最終的には年間プラン自体を取り下げた。DAZNの何が問題だったのか、消費者問題に詳しい住田 浩史弁護士に聞いた。
2026/06/23
企業の副業解禁とコンプライアンス対策を支援
企業の副業解禁の流れが加速している。従業員は本業以外の労働を増やすことで、収入増が見込める。従業員が副業で獲得したスキルで、本業への貢献も期待できる。企業側にとっても、副業は採用活動に活用できる。業務発注から関係を深めてからの転職や採用後のミスマッチを防止する効果がある。一方で、副業の一般化に伴い、同業他社での競業や情報漏えい、ブランド毀損、過重労働など、副業リスクは増加している。フクスケ(東京都千代田区)は、企業の副業制度の運用支援に加え、副業コンプライアンス向上に関するデータを分析し、リスク診断サービスも提供している。代表取締役社長の小林大介さんに、企業の副業解禁がもたらす影響について話を聞いた。
2026/06/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方