日本の危機管理を変える!危機管理カンファレンス2014
10月1日都内で開催 実務担当者ら約600人が参加

本誌リスク対策.comは10月1日、都内品川の東京コンファレンスセンター・品川で「危機管理カンファレンス2014」を開催した。今年のテーマは「危機管理を変える!」。当日は、民間企業を中心に危機管理・BCP・情報システム部門の実務担当者約600人が参加。組織の危機管理や事業継続マネジメント、災害対応について求められる改善点や解決策などを追求した。 

冒頭、本誌編集長の中澤幸介は「東日本大震災以降、危機管理に本気で取り組む組織と、そうでない組織で危機管理格差が生まれている。日本の危機管理を変えるには、この格差を縮めることが大切。まだ本気になっていない組織がイベントを通じて危機意識を共有し、すぐに行動に移してもらえたら」と語った。 

オープニングセッション「日本の危機管理を変える!安全文化を組織に定着させるために」には、株式会社道(タオ)代表取締役社長の河合太介氏、岩手医科大学附属病院の秋冨慎司氏、日本政策投資銀行環境・CSR部BCM格付主幹蛭間芳樹氏、株式会社ディスコサポート本部総務部BCM推進チームリーダー渋谷真弘氏がパネリストとして登場。 

河合氏は、つながり力の強い組織づくりこそ最大の危機管理、つながりのベースはコミュニケーションにあると言及。いざという時に支え合う会社として、つながり力を高める努力をしている企業の事例を紹介した。秋冨氏は、福知山線脱線事故や東日本大震災での経験から、災害時に生じる混乱の中でどのように対応したか、その問題点、解決策についてをISO22320を踏まえて解説した。蛭間氏は、「日本の危機管理には経済、財務の視点が欠けている。危機管理を変えるには、リスク(Single→Multi→Allへの転換)、ガバナンス(全体を見て全体をつかみ、全体を動かす)、リーダーシップ(明確な優先順位と有事に対する価値観の転換、損切り・撤退の意思決定)が大事である」と強調した。渋谷氏は、顧客が安心して取引できる、従業員が安心して働ける会社にするためにBCMを導入している同社の具体的な取り組みについて解説した。 

次に、「爆速経営」をスローガンとして打ち出しているYahoo!JAPANが、最高速度で走りながらいかにリスクを管理するか、ERMにどのように取り組んだのか、ヤフー株式会社リスクマネジメント室室長の八代峰樹氏とERMプロジェクトマネージャーの小玉弘子氏がそれぞれ解説した。 

続いて、株式会社ピーエスシーICTコンサルティング事業部部長の中村晃久氏がモデレーターとなり、ユーザー企業が語る危機管理の最前線と題して、パネルディスカッションを実施。損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント株式会社ERM部部長落合正人氏、株式会社マインドパレット代表取締役神尾隆昌氏、日本マイクロソフト株式会社パートナーセールス統括本部パートナーテクノロジー本部シニアパートナーテクノロジーストラテジスト澤木俊彦氏が登場。落合氏は、不測の事態のマネジメントはスピードアップがカギとなり、コミュニケーション、蓄積データ利用、ICT作業環境が他社と差がつくポイントとなると解説。澤木氏は、本社移転に伴ってマイクロソフトが目指したテレワーク、ペーパーレスの取り組みがどう東日本大震災時に機能し、効果があったかを説明した。神尾氏は、社員2人からスタートしたベンチャーが、いかにして危機管理体制を構築してきたか、失敗例を含めながら話した。 

カンファレンスの後半は、2つの会場に分かれて実施。 

「訓練を劇的に変える3つの要素、参加者全員が盛り上がり役立つ訓練の手法」では、ヤフー株式会社の小玉弘子氏が「ヤフートップページの更新は絶対止めるな」をミッションに行った「ヤフーくんれん(訓練)」の模様を説明。株式会社日立製作所ひたちなか総合病院院長永井庸次氏は、インフルエンザパンデミック対応の訓練を地域全体でどう取り組んだかを解説。支援に当たったニュートン・コンサルティング株式会社のプリンシパルコンサルタント内海良氏と同シニアコンサルタント久野陽一朗氏は、訓練を劇的に変えるには現状の成熟度の把握、目的・目標の設定、シナリオ設計の3点が大事だと指摘した。 

「日本企業に求められる安全文化の構築、世界のリスクマネジメントをリードするデュポンの取り組み」では、デュポン株式会社安全・防護事業担当執行役員の脇野大彦氏が、創業から2世紀を超えるデュポンの安全文化の歴史と背景、危機に対する対策の実例などを紹介した。

「グローバル事例と知見に基づいた日本における危機管理のあり方、ERM/BCP/CMTへの具体的な取り組みの実態」では、日本アイ・ビー・エム株式会社ストラテジー・セールストランスフォーメーション&オペレーションズBCPリーダー担当部長の齋藤守弘氏が、リスクマネジメントの考え方、BCP、直下型地震への対応について説明した。「事業継続におけるサプライチェーンリスクマネジメント」では、グループジャパン株式会社営業本部営業戦略推BSI進担当東日本エリア営業部部長の鎌苅隆志氏が、現在のサプライチェーンの課題と年内に発行される予定のPAS7000:2014の管理手法について解説した。 

このほか、「BCPの初動から復旧まで支援する情報集約・共有とコミュニケーション」では、インフォコム株式会社サービスビジネス営業部防災士・事業継続管理者危機管理担当の高橋克彦氏が「エマージェンシーコール」「BCPortal」との開発経緯と効果について説明。鈴与株式会社危機管理室室長後藤大輔氏は、鈴与グループ140社の事業継続戦略、プロジェクト8年の歴史とグループ全社へのBCP展開の模様を披露した。 

TIS株式会社公共ソリューション推進部部長の林伸哉氏と本誌編集長中澤幸介は「前提が崩れ去る、危機対応シナリオの限界」と題して、なぜ危機管理のシステム化が難しいかについて語った。株式会社大塚製薬工場総務部次長の喜田哲也氏は「輸液を止めない」「地域を守る」をキャッチフレーズに地域と一帯になって進めているBCMの取り組みを紹介した。 

本カンファレンスの締めくくりは、「オリンピックに向けた多機関連携の危機管理」をテーマにパネルディスカッションを実施。警視庁警備部理事官の松澤誠氏、東京都総務局総合防災部情報統括課長の間船芳秋氏、在日米陸軍消防本部元統合消防次長の熊丸由布治氏がパネリストとして登場。モデレーターの公益財団法人公共政策調査会第二研究室長河本志朗氏とともに、2020年東京五輪に向けて、異なる組織文化・体制下でも信頼できる関係を構築するためにどう取り組むかについて議論した。 以下、協賛企業による講演の内容を紹介する。

◆先進企業が見直したBCPの3つの盲点
 PSCユーザー企業が語る危機管理の最前線

◆訓練を劇的に変える3つの要素
 参加者全員が盛り上がり役立つ訓練の手法

◆グローバル事例と知見に基づいた日本における危機管理のあり方
 ERM/BCP/CMTへの具体的な取り組みの実態

◆事業継続におけるサプライチェーンリスクマネジメント
 「PAS7000:2014」に基づくサプライヤーの管理手法

◆BCPの初動から復旧までを支援する
 情報集約・共有とコミュニケーション

◆前提が崩れ去る、危機対応シナリオの限界!
 BCP実効性を高める情報基盤とは?