■政府による大規模な市民の監視

防犯カメラと言えば犯罪の抑止に役立つものと考えることが多く、私たちはあまりネガティブな印象は持つことはありません。しかし度を超すと、つまり個人を特定できるAIと連動した監視カメラが社会の隅々にまで行き渡ってしまうと、私たちにとって大きな脅威となってしまう可能性があります。

例えば中国当局は、犯罪を抑え込むために大規模なAIベースの顔認証技術による監視体制を敷いているというのです。CNBCはニューヨーク・タイムズの記事(下記参照)を引用し、現在中国には約2億台の監視カメラが設置されていると述べています。しかも世界で初めて「社会信用システム」という仕組みを考案し、市民の言動を追跡して格付けし、飛行機の搭乗その他のサービスへのアクセスを許可したり禁止したりしようとしている。中国という国はすでにディストピア社会に移行しつつあるのでしょうか。

■ニューヨーク・タイムズの記事
https://www.nytimes.com/2018/07/08/business/china-surveillance-technology.html

中国は経済における世界のリーダーを目指していますが、それはAI部門についても言えることです。AIと顔認証技術を使ったテクノロジーを開発したのはアリババが出資するベンチャー企業のSenseTimeで、広州市と雲南省の自治体にAIベースの顔認証システムを提供しています。同社のウェブサイトによると、2017年以降、広州市の公安当局では2000人以上の犯罪者を特定するのにこのシステムが役立ったと伝えています。

こうした状況を懸念する声があることは言うまでもありません。ニューサウスウェールズ大学のAI学部教授トビー・ウォルシ氏は「監視は、AIが予期しない恐るべき結果をもたらす対象として最も上位にランク付けされていたものだ」と述べた。CNBCはこう結んでいます。

(了)