先進国での基準厳守

また、先進国でも災害時の国際基準は守られ考慮されている事例として、まずは前回も紹介したアメリカの事例です。

アメリカ小児科学会ではこんなマニュアルが作られています。ここにある「もらい乳」については、現在日本では一般的ではないので、議論があるところですよね。アメリカでは感染症対策がとられていたり、日本でも妊娠した際、母子感染の怖れのある感染症については、一通り検査し母子手帳に記載されますが、ここでは、この論点には深入りしません。とりあえず、理解していただきたいのは、先進国のアメリカであっても、国際基準にそって災害時は母乳育児支援を基本にすえ、母乳の人にミルクを無制限に配っていないということです。

 

ちなみにこれは「医師のための母乳育児ハンドブック 第2版 米国小児科学会/米国産婦人科学会」の表紙です。この中の「災害時の母乳育児支援」の項では、

ストレスによって母乳が出なくなることはなく、栄養不良の女性であっても母乳育児をうまく行うことができると母親に伝えて安心させる必要がある

と書かれています。

こちらは災害時の乳幼児栄養についてのニュージーランドの政府の方針声明です。

ここでも、

母乳育児中の人には継続して母乳育児が続けられるよう支援し、母乳育児中の母親にミルクを配布しないことが明記されています。

さらに、こちらはEUの事例です。

乳幼児栄養のガイダンス21ページにはWHOコードを守ることが書かれていて、ヘルスケアシステムにおけるミルクのプロモーションの禁止や母親にサンプルを配ってはいけないことが書かれています。

というように、国際基準は発展途上国だけの話としてしまう主張は、少々説得力に欠けるかなと思ったりします。