2016/11/17
従業員の命を守る「職場の医学」
根元を縛る?
出血に対して根元(心臓に近い側)を縛って止血するという方法がありますが、これはやってはいけません。止血法としては効率が悪く、余計に出血が増えることがあります。また、神経を傷つけるなどの合併症もあり、行うのであれば専門的知識が必要です。縛ってはいけません。
洗浄
水道水でキズを流して汚れを十分に取り、キズの中に異物(砂や泥など)がないことを確認します。日本の上水道技術は世界トップレベル、水質は折り紙付き、キズを洗浄しても全く問題ありません。ジャブジャブ洗いましょう。
消毒はするの?
キズの消毒は絶対にしてはいけません。「キズの中に入れてもいいのは自分の目に入れられるものだけ」です。消毒液を目に入れたら目が焼けてしまいますね?消毒液でキズの中が焼けてしまったり、傷口から出て来るキズを早く治すための成分(後述)の働きを低下させたりします。そのためキズの治りが悪くなります。いかなる種類の消毒液であっても絶対に消毒は禁止です。キズは洗浄するのであって消毒はしません。
ドレッシング(被覆:キズを覆うこと)
過去にケガをした時「傷口がグチョグチョして治りが悪い…」と言われたことはありませんか?それでいいんです。キズは決して乾かしてはいけません。常に湿った状態にします。キズからジュクジュクとした汁が出てきますが、これを浸出液(しんしゅつえき)と言います。キズを早く治すために自然にキズから出てくる液体です。この浸出液にはキズを早く治すための成分がたくさん含まれています。この浸出液をキズのまわりに留まらせる事がキズの治りを早くします。
キズを覆うことをドレッシングといいますが、ドレッシングに使えるものの一例として準備しやすいものには、ラップ(台所用品)があります。覆う範囲はキズより一回り大きいくらいが丁度良いでしょう。できるだけ出血が止まってから実施してください。健康な皮膚を覆うとかぶれることがありますから必要最低限の面積を覆います。
またラップを貼るのが難しいような部位のキズには軟膏(ワセリンが良い)を塗り、乾かさないようにするという方法もあります。ワセリンを塗っただけだとベタベタしますから、その上から更にラップを被せるとワセリンが糊の役目をしてくれます。この方法はヤケドや広い範囲のすりキズなどに有効です。ちなみにワセリンはキズに入れても安全です。ボクシングや格闘技の試合では顔面に塗りますし、もちろん目に入っても大丈夫です。
血液や浸出液がラップの間から滲むようなら、ラップの上からガーゼや布をあてます(上からですよ)。キズを乾かしてしまうようなもの、浸出液を吸い取ってしまうようなもの、繊維や糸くずがキズにつくようなもの(ガーゼ、ティッシュペーパー、脱脂綿など)は直接キズにつけてはいけません。キズの治りが悪くなり、バイキンが入りやすくなります。ガーゼを当てていいのは、ケガをして直後の直接圧迫止血法の時だけです。その後はきれいに洗浄してドレッシングを行います。


その後の家庭でのキズの処置について
入浴やシャワーも可能です。キズの周りの皮膚の脂やアカ、血液や浸出液がこびりついているのをきれいに洗い流します。シャンプー、石鹸、ボディソープをつけても構いません。ゴシゴシやると痛いし、再び出血したりするのでよく泡立てて優しく洗いましょう(もちろん、水だけでも十分です)。
- keyword
- 従業員の命を守る「職場の医学」
従業員の命を守る「職場の医学」の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2023/01/31
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月31日配信アーカイブ】
【1月31日配信で取り上げた話題】家庭での防災行動を高めるために
2023/01/31
-
-
1000人に聞いた防災の取り組みと行政への期待
リスク対策.comは、地域住民がどの程度防災に取り組んでいるのか、また防災の観点から行政に対してどのような要望を持っているのかなどを把握する目的でインターネットによるアンケート調査を実施した。その結果、2021年5月から避難勧告が廃止され避難指示に一本化されたことについては約5割しか理解していないことや、平時から国や地方自治体の防災のホームページなどがあまり活用されていない実態が明らかになった。調査は、2022年11月21日から22日にかけてインターネット上で行い、全国の20歳以上の成人男女1000人からの回答を得た。質問は、回答の質を高めるため「この質問は一番右の回答をお選びください」という条件項目を入れ、適切な回答をしなかったものを除き、計889人を有効回答として分析した。
2023/01/30
-
社内滞在時をイメージさせる実践的な訓練と備蓄
テクニカルセラミックスを開発・生産するクアーズテックは2012年、東京都の帰宅困難者対策条例を機に一斉帰宅抑制対策に乗り出しました。独自のプログラムを追加した実効性の高い訓練や被災時の心理にも配慮したきめ細かな備蓄が評価され、2021年には東京都のモデル企業に。同社の取り組みを紹介します。
2023/01/29
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月24日配信アーカイブ】
【1月24日配信で取り上げた話題】最強寒波への備え
2023/01/24
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月17日配信アーカイブ】
【1月17日配信で取り上げた話題】防災心理を学ぶゼミ生が制作した企業の防災マニュアル/コロナ発生から3年 企業の初動対応を振り返る
2023/01/24
-
BCPと助け合える関係が機能した災害復旧活動
2019年の台風19号でグループ含め3工場が壊滅的被害を受けたカイシン工業は、経営トップが「全力復旧」の方針を発表すると各工場が即座に活動を開始。取引先や協力会社の支援を受けて設備の交換を迷いなく進めるとともに、代替生産によって早期に出荷を再開しました。同社のBCPと助け合える関係づくりを紹介します。
2023/01/19
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方