「日本の『着心地』に対する研究は世界でも群を抜く。この技術を応用した防護服を、これから広くアジアで展開させるのが私たちの役割」と話すのは、旭・デュポンフラッシュスパン プロダクツ代表取締役社長の宇野真氏。大学では化学を専攻し、1985年に新卒で当時の日本法人であったデュポンジャパンリミテッドに入社。長年の繊維系製品の営業職を経たのち、2012年にデュポンアジアパシフィック防護服部門のマーケティング統括者に抜擢され、2013年から兼任で現職についている。

同社は、1995年に旭化成と米国のサイエンスカンパニーであるデュポン社の折半出資による合弁会社として設立。日本国内においてデュポン™タイベック®高機能不織布の輸入販売、加工、用途開発、技術サービスを行っている。

不織布「タイベック®」は通気性、透湿性に優れ、軽く、水に強く、それでいて強度が保たれているという特徴を持つ。デュポンはその技術を応用し、粉じんから作業者を守る防護服を開発。一方で化学物質・化学薬品にも対応するタイケム®防護服を商品化するなど、ハザードの種類により適切な防護服を提案している。同社の防護服は、例えば東日本大震災の原子力事故において、汚染除去に従事する作業者が着用していた防護服と言われれば、読者もイメージがしやすいのではないだろうか。

宇野氏は「日本は高い労働安全基準のみならず、災害や感染症から多くの経験値を積んでおり、タイベック®防護服分野においても、アジアパシフィックで指導的立場にある」と話す。

さらに同社は、日本を代表する総合化学会社である旭化成との合弁会社であるため、デュポン単独ではできないユニークな「着心地」に関する研究・開発能力を持ち、現在も作業現場のさまざまな問題を解決する商品を開発中だ。

日本発の技術で着心地が向上した防護服が、広くアジアで働く場作業者の命を守る日は、そう遠くないだろう。

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