汚染された環境を戻せる場合、戻せない場合

徹底的な消毒で清浄な状態に戻す
ところで横道にそれますが、口蹄疫や豚コレラ、アフリカ豚コレラのような、日本国内には病原体が存在しない、産業動物に深刻な被害を与える重要度の高い動物固有の感染病(家畜伝染病予防法で家畜伝染病、いわゆる家畜の法定伝染病に指定されている感染病)が農場などで診断された場合には、その農場で飼育されている産業動物は全て殺処分され、通常焼却または埋却されます。その上で農場全体が徹底的に消毒されます。これは、国内をそれらの病原体が存在しない、元の清浄な状態に戻すために行われるのです。人に感染して直接被害を及ぼさない感染病の場合でも、このような極めて厳格な行政対応が獣医領域ではなされています。

病原体の消滅が困難な場合はワクチン接種
一方、感染病予防のために行われるワクチン接種は、原則的には、ある地域(国)を汚染している病原体を消滅させることが困難と判断された場合、その地域(国)で生活、活動する人(動物)の「病原体感染に対する抵抗性を獲得させる」ために実施されるものです。人の感染病の場合、多くの感染病予防のためのワクチンは整備されています。現在国内で発生していない感染病に対するワクチンも、多くの場合備蓄されていると思われますので、必要性が生ずると予想された場合、早めに最寄りの保健所などにワクチン接種について相談することが推奨されます。

■ワクチンが間に合わない場合は感染経路を遮断
しかし、新型インフルエンザなど社会に大きな影響を与え、しかもワクチン開発および製造が間に合わない状態にある感染病の流行が起きている時には、可能な限り外出を控えること、イベントの中止などの防疫対策が取られます。これらは病原体の「感染経路」を遮断することにより、感染病の蔓延を防止するために実施されるものです。

■病原体が存在しなければワクチン接種は禁止(動物感染症)
動物の感染病の場合、ある地域(国)に病原体が存在しないと判断されている感染病に対するワクチン接種は禁止されています。ワクチン接種の行われる感染病は、その病原体がその地域(国)に常在していること、すなわちその病原体汚染地域(国)であることを意味します。従って、ワクチン接種は貿易上不利益を被ることがあります。