2016/05/12
ニュースリリース
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/1/4/670m/img_144f198473f99f83b6f08058b40412f2156165.jpg)
米国ビザ免除プログラム(VWP)の変更により、電子渡航承認システム(ESTA)の有効な認証を所持していても入国を拒否されるケースが発生
4月1日に米国国土安全保障省(DHS)によって導入された新ルールにより、有効な電子渡航承認システム(ESTA)の認証を所持しているにも拘らず、ビザ免除プログラム(VWP)により入国しようとした約38カ国からの旅行者が入国を拒否されています。大きく公表されていないこの変更により、ビザ免除プログラムを利用して米国へ入国するには、ESTAに加えて、生体認証チップを内蔵したパスポートの所持が求められることになりました。言い換えれば、デジタルチップを内蔵しない古いタイプのパスポートを所持する人は入国を拒否されることを意味します。
DHSによって発行された公式のガイダンスでは、アンドラ、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルネイ、チリ、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本*、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、モナコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、サンマリノ、シンガポール、スロバキア、スロベニア、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、台湾、イギリスからの旅行者は、ビザ免除プログラムにより米国に入国することができ、ビザを取得することなく、最大90日間のビジネスや観光目的に滞在することが許されます。ビザ免除プログラムの利点は、ビザの取得が不要なので、米国に渡航する迄の期間が短くて済むことですが、4月1日からは、ビザ免除プログラムで入国をする旅行者は、機械読取り可能な身分証明のページ(biographicpage)とパスポート所有者の生体情報を記録したICチップを内蔵したパスポートの所有者に限られます。このようなパスポートは、一般に「電子パスポート」として知られています。
このパスポートに関する新ルールは、ESTAとは別ものであり、旅行者は依然として米国に旅行する前に有効なESTA取得する必要があります。
*日本のIC旅券は適応
旅行者が直面する問題の一つは、ESTAのアプリケーション・プロセスが電子パスポートの所持の有無を問う過程がないため、未所持でもESTAによる認証が与えられてしまう点です。その結果、米国の国境で有効なESTAがあるにもかかわらず、電子パスポートを所持していないために入国を拒否される事態が発生しています。英国だけでも、百万人以上の人が生体認証チップを内蔵していないパスポートを所持しています。それ故、全ての旅行会社、航空会社、さらに米国入国審査当局は、この変更を効果的に告知することを怠ったとの批判に晒されています。このような批判にもかかわらず、ABTA(英国旅行業者協会)の広報担当者は、1月に協会のメンバー各位に潜在的な問題を注意喚起したと述べ、米国税関・国境警備局の広報担当者も、出来限りESTA申請者と共にESTA認証の所有者にも変更に関するメールを送信したと述べていますが、残念ながら、明らかに全員に対してではないと見るべきでしょう。英国の生体認証内蔵のパスポートは2006年半ば以降に発行されてきましたが、他の国では新技術の導入が遅れていたことで、新たなパスポート申請が急増し、パスポート更新の待ち時間に影響を与えているケースが見受けられます。
米国ビザの必要条件の変更は、TheUSTerroristTravelPreventionsAct2015(米国テロリスト渡航防止法)の下、サンバーナーディーノ銃撃事件を受け、昨年末に決定され、先月発効となりましたが、多くの旅行者はパスポートの新しい要件を十分に知らされていないように思われます。結果として、米国への入国を拒否された人々は、本国に戻り、通常では3週間はかかるとされる新しいパスポートの申請を行うことになります。
数千万という生体認証チップ未内蔵のパスポートを所持する人たち、多くはヨーロッパの人ですが、に潜在的に影響を与えるこの変更に対抗して、EUは、欧州に訪れる米国市民向けに、より厳しいビザ要件の導入を検討していると述べています。少なくともEU加盟の5ヶ国が、現在、ビザ免除プログラムを利用して米国に渡航することができなくなっています。欧州委員会は、対抗的な制限を課すかも知れないと警告していますが、どのような制限の形になるのかは、2016年7月の欧州議会および委員会の決定を待つことになります。変更は、シェンゲン協定国への米国市民の入国ビザの要件を厳しくするものになるだろうと言われています。現在、米国市民は、90日間以内ならばシェンゲン協定国への観光とビジネス目的の渡航にビザを必要としません。
ビザ免除プログラムの適応ルールの変更を受け、米国渡航前に、生体認証チップを内蔵する電子パスポートを所持しているか否か今一度確認することを、アンビルはお勧めします。
所持するパスポートが電子パスポートか否かを確認するのは簡単です。パスポートの表紙に電子パスポートであることを証明するシンボルマークが印刷されています。横長の長方形で、それを真横に割るように水平線が中心にある円を囲むようにして走るマークです**。これはグローバルな電子パスポートのシンボルマークです。電子パスポートを所持せずに米国への渡航を計画している方は、国籍のある国の米国大使館でビザを取得する手続きを進めつつ、早急にパスポートを交換することをアンビルはアドバイスします。
ビザ発行に必要な、大使館での最初のインタビューに最長で3週間ほど、さらに諸手続きの時間が掛かるケースが見受けられます。一方、パスポートの交換までの時間はかなり短くなることもあります。
カール・カークカルディ(KarlKirkcaldy)
リスクインテリジェンス部門長
※本稿は4月9日付で発信された弊社スペシャルレポートの邦訳となります。
原文をご覧になるにはここをクリックしてください。
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