皇居と二重橋(出典:写真AC)

「世界史としての日本史」より

元号が平成から令和に代わったことを契機に、天皇制を論じた図書数冊をあらためて読んでみた。初めて読んだ「世界史としての日本史」(小学館新書)に教えられることが多く、本稿に選んでみた。

同書は作家半藤一利氏(「歴史探偵」を自称)とライフネット生命保険会長(2016年当時)出口治明氏との熱のこもった「対談集」である。古今東西の歴史・文学・芸術に通暁した博覧強記の両者の対談は知的刺激に満ちていて一気に読了してしまった。同書は天皇制のみに焦点を合わせた対談集ではもとよりないが、天皇制について示唆に富んだ指摘があった。その一部を紹介したい。余談だが、私は<歴史探偵>半藤一利氏の作品の愛読者である。氏の膨大な作品群(対談集・講演集も含む)に「はまった」時期もあった。氏の雑誌ジャーナリズムで鍛えた「読ませる」文章には尽きない魅力があって、一連の「夏目漱石論」をはじめ「勝海舟論」、「永井荷風論」などは巻措(お)く能わずとばかりに読みとばした。氏独特の「江戸下町的ユーモア」時には張扇的「啖呵」(氏の表現)が文章に躍動感を加えている。

また氏の戦前における陸海軍への批判的作品群ももちろん愛読した。軍部が天皇の御意向に反していかに暴走したか、半藤氏は怒りと共に史実の分析を展開する。

特に強く印象に残ったのが「戦う石橋湛山」であった。戦前の軍部による言論弾圧に敢然と挑戦した言論人湛山に氏は深い敬意を払っている。小生も一介の物書きとして敬意を払うことについては人後に落ちないつもりである。