これは、少し重要なメッセージです。(被災者のニーズについて)【熊本地震】(4月19日のFBより)

室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
2016/04/19
室﨑先生のふぇいすぶっく
室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
これは、少し重要なメッセージです。
災害対応の戦略や戦術は、被災の実態と被災者のニーズによって定まる。内容を先に形式は後にである。どういう体制をとるか、どのような構えをとるかの解答は、現実を冷静に分析することから得られる。過去の経験にこだわってはいけない。
熊本地震は人口70万人の地域に被害をもたらしている。また10万の避難者を生み出している。この数字はどちらも、阪神・淡路大震災の1/3である。ところが、直後の避難所数を見ると、阪神・淡路と同じ900~1000である。避難所数がとても多いというところが、ポイントである。
被災地の生活救援ニーズを被災者数でみると、阪神の1/3と見積もれる。ボランテイアは阪神の1/3ということで1日3000人から5000人いるとはじき出される。ただ避難所数が多く、取りこぼしがないようにということで考えると、小規模避難所に5人、大規模避難所に10人ということでボランテイアを配置すると1日7000人ほどのボランテイアがいるということになる。
全半壊の建物は3000棟である。阪神・淡路大震災の1/70である。建物被害で見ると、中越沖地震の被害規模に似ている。それでも中越沖の全半壊数の1/2である。応急危険度判定や罹災証明の手間は、中越沖の1/2程度と見積もることができる。
中越沖では約3000人の危険度判定ボランテイアが9日間かけて危険度判定を行っている。私は2次災害防止の観点から、危険度判定は3日でなすべきと考えているが、欲を言わず、中越沖並みで9日間で危険度判定をするとなると、1500名の判定ボランテイアがいる。
ところで後片付けボランテイアであるが、3000棟のうち1000棟が安全か要注意に判定されるとして、1棟5人・日とすると5000人日いることになる。5日間で後片付けを完了するとすると(被災者には2週間以内に家に戻ってきてほしい)、避難所支援とは別に1日1000人のボランテイアがいることになる。
これだけのボランテイアをどのようにして集め、どのようにしてオペレーションするかを、しっかり考えないといけない。東日本や常総の経験の延長線上で考えていてはならない。
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