次に備えて政策化するスピード感の欠如【熊本地震】(5月6日のFBより)

室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
2016/05/06
室﨑先生のふぇいすぶっく
室﨑 益輝
神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表
今、熊本から帰ってきました。役立たずの私が被災地に行っても「迷惑をかける」だけなのですが、現場を見ておかないと課題もニーズも把握できないので、被災地をウロウロしてきました。いつもの私流の考え方で、行政には顔を出しませんでした。お待ちになっていた行政の方もおられたようですが、ご容赦ください。
さて、大震災の教訓が生きていないというのは「事前」あるいは「初動」のことで、「事後」や「復旧」については大震災の経験が十二分に生かされていました。被災者はもとよりボランテイアも行政もみんな頑張っていました。その健気な力に、信頼と自由と知恵と勇気と明るさをもう少し加えて、受動から能動に転化することができればと、思います。
とはいうものの、避難所の劣悪な環境に象徴されるように「大きな困難」がいまなお横たわっています。その困難を、みんなで知恵と勇気を出し合って、急ぐものは急いで、急いでならないものは急がずに、逃げずに向き合って解決をはかっていくしかありません。
過去よりも未来を見ないといけないということです。その未来を見るということに逆行することになるのですが、少しだけ、鉄は熱いうちにうてということで、過去を振り返っておきたいと思います。今の困難の根源をつかんでおかなければ、無意味な責任の押し付け合いが生まれてしまうと思うからです。
根源の第1は、次に備えて政策化するスピード感の欠如です。東日本大震災で、画一的な住宅再建のプログラムの抜本的な見直しの必要性が痛感されたのに、その改善策を検討することなくずるずると今日まで来てしまいました。住宅再建のあり方の答えを出していなかったのです。それゆえ、熊本地震の後で、答えを探す必要に迫られ、時間を浪費するとともに、拙速な答えを出さざるを得ない羽目に陥っています。
その第2は、想定外に備えることが今なおできていないということです。複数の断層が一体のものとして動く、時差を置いて連続した大きな地震が起きることは、想定内のはずであって、想定外ということを免罪にしてはならないのです。なぜ、今回も想定外を許したかを、真摯に考えなければなりません。ともかく、被害想定が甘く、その結果、資源も空間も何もかも足りなくなって、今の被災者の苦しみが生まれていることを、自覚しなければなりません。
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