思い込みが発展を阻害

さて、この事例が示しているのは「これが普通である」という昭和の常識です。そしてそれが国民に「意識せぬ偏見」として浸透しているのです。女性は結婚、妊娠、出産、育児をするもの。そしてそれを最優先させることが、一番の幸せ、そうするのが普通、という常識です。本来、誰でもそうとは限らないのに、意識せず私たちはそう思い込んでいるのかもしれません。

私たちの意識には、常に「意識せぬ偏見」というものがあり、思考はそれに支配されるといいます。例えば、イノベーションは若者しか起こせないとか、老人に難しい話は無理とか、女性は運転が下手など、数えればきりがないほど「意識せぬ偏見」は多いのです。

私は社内のハラスメントの多くは、この「意識せぬ偏見」や「日本に古くからある常識」(これが普通である)などからはみ出した行為を排除しようとする動きから発生しているように思えてなりません。これは多様性を認める社会とは、逆を行く思考です。

女性活躍推進がわざわざ強調されるほど、女性が活躍してこなかった国、日本。子育ては女性がメインで男性は補助、だから男が子育てを楽しんだり、そのために休むなんて女々しい行為、と言われ続けてきた国、日本。これをこの先どうやって変化させればよいのか、企業ぐるみ、国家ぐるみで取り組まねばならない問題であると思います。

(了)