2019/06/11
本気で実践する災害食
手作りより市販品を利用し想定外のリスクを減らす

被災地はライフラインが停止し、洗い物や加熱調理が極めて難しい。そこで、手作りではなく、自社製品を勧めています。自社製品は、衛生基準による衛生管理が行き届いた設備で製造され、賞味期限が表示されています。倉敷市保健所は事前にボランティアの炊き出し指導に専念した結果、食中毒事件もなく、被災者は安全安心な炊き出しの恩恵に浴しました。
今後の災害に向けて、以前はこうしていたという炊き出しの風習は通用しにくい場合が発生しつつあります。保健所のリーダーシップは言うに及ばず、企業、行政、自主防災、ボランティア団体のみなさんの「環境順応型」「進化型」の事前学習が強く望まれる今日です。
質問 衛生管理のポイントは?
Q. 倉敷市保健所の食中毒予防のための衛生管理のポイントをまとめてください。私の知人でマンションにお住まいの方が「いざというときは、各戸で握り飯を作って持ち寄り、皆で分け合う」と言っています。
A. ちょっと待って! それ危ないです。以下をよく読みましょう。
生ものの使用は避ける。工程が複雑なものは許可施設で調理すること。非衛生な場所、屋外や各家庭で手作りしたものを持参しない。調理品を現地で切り、加工することは避ける。運搬時の温度管理(保冷)に配慮すること。
Q. 「キチンとした調理室」とは? もっと丁寧に教えてください。
A. 会社には湯沸かし室がありますね。しかし、狭くて調理には不向き。冷蔵庫、熱源、換気ともに不十分です。公民館のお茶くみ場も同じです。将来に向けて、地域の集会所には調理専用の衛生的な作業場が必要です。地域住民が共同作業できる専用のキッチン=調理場を併設する必要があります。調理場は共助の出発点であり、健康のカナメ・拠点ですから。
(了)
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