2019/06/24
知られていない感染病の脅威
国内外で感染者が増加傾向
非定型的抗酸菌症は、ごくまれに発症する疾病であることから、日本国内では、最近まで問題視されていませんでした。正確には捉えられていませんが、近年増加しているという報告がなされています。すなわち、2007年には人口10万人に対して5.7人程度発症していたのが、2014年には、人口10万人に対して15人程度発症まで増加しており、決して珍しい疾病ではなくなっているのです。結核患者数より多いです。
非定型的抗酸菌症は結核と異なり、出現する症状が軽微で、病勢が進行しても生命に関わることが非常に少なく、家族に菌を感染させる危険もないため、注目されてこなかった疾病と考えられます。実際には報告されている数の倍以上の罹患者が国内には存在するのではないでしょうか。
一方、国外でも非定型的抗酸菌症の増加していることが報告されています。アメリカでは、最近約10年の間に倍増し(現在では国全体では10万人に対して3人程度、特に罹患率の高い地域では10万人に対して40人程度)、もともと症例の少なかったヨーロッパ、オセアニアでも増加の一途をたどっています(10万人に対して1人程度)。
エイズ患者の50~60%はMACを併発
欧米では、エイズ患者や免疫抑制剤の服用により、免疫が低下した人たちの発症が増加しているため、非定型的感染症に対する関心は年々高まっています。例えば、アメリカの エイズ患者の50~60%はMAC感染症を併発していることが分かっており、今やMAC感染症は エイズ患者にとって最大の危害要因と考えられています。
中国、台湾、韓国などの近隣のアジア諸国では正確な疫学データが出されていませんが、これらの国々でも非定型的抗酸菌症は明らかに増加しているようです。中進国以下の国々の抗酸菌感染における全般的な情報が極めて少なく、これらの国々の非定型的抗酸菌の分布状態や、病原体として果たしている役割などの把握がほとんどできていないことに注目する必要があります。
これまで抗酸菌感染症としては、結核だけがクローズアップされていましたが、今後、非定型的抗酸菌の存在に対して強い認識を持ち、本菌の分布状況の詳細を明らかにして(特に中進国以下の国々)、可能な限り非定型的抗酸菌の分布密度を地球規模で下げる努力が求められるのではないかと考えています。非定型的抗酸菌が、何らかの原因で人を含む各種動物に対して、結核菌同様の強い病原性を近い将来獲得する可能性についても考慮に入れておく必要があると思われます。
次回は、脳炎を引き起こすフラビウイルス感染症について紹介する予定です。
(了)
知られていない感染病の脅威の他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/15
-
-
-
-
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
-
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
-
-
-
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方