ポケモンみたいに併せ技で進化

そんなカードを使いながら、この方の支援のポイントとなるカードにふと気づくことになります。それがこちら。

 

支援法の基礎支援金カード

一見、地味カードです。「全壊で100万円、大規模半壊だったら50万円」

この方は半壊だから全く基礎支援金もらえなかったのだろうな…と思ったその先に書いている内容を見てみると、カード下に「半壊で解体や長期避難も100万円(単身は4分の3)」とあります。

なんたることでしょう! 半壊でも解体すれば100万円…。このカードはポケモンカードバトル同様に「進化」の技が使えるカードではないですか!!

【公式】9分でわかるポケモンカードバトル(出典:YouTube、進化の説明は6分26秒から)

実はこのカードに、こちらのカードを併せると半壊が全壊に進化するんです。そのカード名は、こちら。

 

公費解体カード「半壊以上の家屋や一部事業所を公費で解体」。

半壊でも公費解体カードで全壊に進化させられると、基礎支援金は100万円もらえるのです。知ってましたか? モデルになったケースの被災者の方は、ご存知なかったので、この制度が使えなかったのですが、支援者の方でもまさかの災害復興の場で、「進化技」があることをご存知なのはどれくらいいらっしゃるのでしょうか?

それだけでなく、被災者生活再建支援金は、先ほどの基礎支援金と加算支援金2つあわせてもらえることになります。つまり進化で半壊が全壊となると、基礎支援金という技が使えるだけでなく、加算支援金という併せ技まで繰り出せるんです。

半壊だとしても、公費解体したら基礎支援金として100万×単身なので4分の3=75万円もらって、家を新築や住居購入すれば、プラス200万×単身なので4分の3=150万円の加算支援金がもらえるので、最大225万円の支援金がもらえることになります。

0円か225万円か…。

半壊や一部損壊では0円だったのに、公費解体という進化技を使って解体したとたん、支援金併せ技まで発生してより多くもらえるなんて、技の効果が大きすぎる感じでなんだか不思議です。この技は持ち家の人だけでなく、家を借りている人も使えます。

もっとも、この「進化技」も「進化技あるある」の難点が生じます。

それは、進化すると進化前に使えていた技が使えなくなるというお約束です。知らない方のための解説はこちら。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ポケモンカードゲーム

進化
ゲーム版における進化を再現したもの。TCG版における進化は、進化ポケモンのカード(進化カードという)を、それに書かれた説明文に従って、進化前のポケモンに重ねることをいう。(中略)進化するとHPが増加し、使えるワザもより強めのものになる。一方、進化前のカードに書かれたワザは使えなくなり、持っていた特性や古代能力もなくなる。

つまりですね。実際問題として、本当は解体しなくてもまだリフォームして使えるような場合であっても、公費解体したほうが、充実した支援金があるために、安易に解体されてしまうという問題が出てきています。さらに、公費解体は、被災者にとってどんなに支援金が多くなるとしてもつらい選択となる場合もあります。ずっと住んできて、家族を見守った家なのです。大切な人が建てて、大切な人の成長を見守ってきた家を解体するという選択は、軽いものではないのです。

ゲームをしている最中も「ある被災者は、今日は解体すると言って、朝になるとやっぱり無理だとなって、でも、やっぱり解体しかないのかと、時間ごとに大きく心が揺れている。それだけ公費解体で心は揺れる。支援者はそれに寄り添うだけ」という声がありました。

この進化技は、効果が大きいですが、それでも被災者に寄り添って使う必要があるのです。ゲームをして考えるからこそわかる当事者の悩みが見えてきますね。