3. 安否確認

基本的な点を言えば安否確認も見直す必要があるのではないか。今回の地震では、余震が多かったことからその都度、安否確認システムが自動発動し、どの時点での安否集計かわからなくなったという組織もあった。その点、イオンは独自のシステムで、どのタイミングでどのエリアを対象にするかを現地と本社の対策本部が意思決定して配信する方法で、スムーズに安否確認ができた。

最近は便利な安否確認システムが次々に登場している。「震度○○以上なら自動的に安否メールが発動」など、その機能を否定するつもりはないが、やはり、①どのような事態の時に、②誰が、③誰に対して、④どのように(仮にシステムが使えない場合どのような方法で)、⑤何を報告するのか、その報告を受けてどうするか、という安否確認の基本をしっかり押さえておく必要がある。

リスク対策.com Vol.38  安否確認の手法大検証

4. 事業を停止する
事業を継続するだけでなく、「停止させる」という判断が重要になることも今回の取材で改めて教えられた。
富士フイルム九州では、前震で工場のラインが自動停止しなかったにもかかわらず、余震も続いたことから、「もしもの一手」としてラインを止める判断をした。そのことが本震の被害を軽減することにつながった。ITセキュリティに置き換えるなら、サイバー攻撃を受けた、あるいは、不審メールを社員が開いてしまった際、システムを止めるのか、動かし続けるのかという判断が迫られる。何を優先させるのか「判断基準」を明確にしなくてはいけない。

アメリカの災害対応では、LIPという言葉が使われている。(自らの)命を守る(Life safety)、二次災害を食い止める(Incident stabilization)、財産を保全する(Property conservation)の順番を示したものだが、二次災害を防ぐことを怠り、売り上げの損失を恐れ、工場を停止することを躊躇してしまうケースがBCPでは起こり得る。継続させることだけがBCPではない。

熊本市内の工務店のアネシスと新産住拓が当初社員を屋根に登らせなかったこともLIPに基づく好判断だ。顧客は、地震直後から、屋根にブルーシートを早くかけてほしいと言っている。そのニーズを早く満たすことだけが事業継続ではないということだ。余震が続いるなら、社員は屋根に上らせない。大切なものは、顧客より、売上より、まず社員の命である。ちょっとした事例だが、こうした点こそBCPの最も重要な部分ではないか。

5. 先手を取る
災害時に「もしかしたら」と考えることは、先手を打てるか、後手になるかの明暗を分ける。

富士フイルム本社は、前震の時点で、現地が大きく被災していないことを確認したにもかかわらず「もしかしたら社員の家族や地域の人が被災しているかもしれない」と翌日に食料を現地に向けて発送し、そのことで本震の直後に現地に食料が届くというスーパープレーを実現した。もしかしたら工場に被害が出ているかもしれないとゼネコンに連絡したことで、本震の直後に専門家が来て建物を診断してくれるという信じられない早さの連携を実現した。

また、誌面で紹介した工務店の新産住拓は、東日本大震災で生じた問題点などを参考にして、次に発生する事態を予測し、職人を確保するために特別手当を出したり、賃金を上げたり、県外からの応援のためにホテルやアパートを確保するなど、先手の対応を打った。「職人が不足する」「職人の賃金が上がる」「応援部隊の宿泊施設がとりにくくなる」「災害後に社員の疲労が高まる」…、これらの情報を、過去に被災した工務店からのヒアリングで知り得たからこそ、先手が打てた。

1つ1つの災害をしっかり検証することが、次の災害対応を早めることにつながるということだろう。