2019/11/07
昆正和のBCP研究室
■次のアクションにつながる情報活用のリアリティ
緊急時におけるタイムリーな情報がいかに大切であるか。これについてはメーカーが被災したとき、製品を発注したあなたの会社でどんな対応を採るかを考えてみると分かりやすい。
「メーカー側は今大変な状況にあるだろう。気の毒だから一段落するまでしばらく待とう」などと、のんきに構えていられるだろうか。むしろ「一日も早く状況を教えてほしいものだ。もし当社発注分が出荷見合わせになったのなら、暫定的に別の仕入先から同等の製品を取り寄せるとか、現行製品は入荷できない旨を早めに顧客に告知することも可能なのだが…」と考えるだろう。被災企業がその状況を速やかに発信すれば、顧客や取引先サイドで調整機能が働くのである。
一方、情報収集・発信の効果については、これまでたびたび引用してきた典型的な事例がある。いずれも熊本地震の被災企業のケースである。
通信設備会社Xは地震のあと、素早く全社員の社有携帯に電話して彼らの無事を確認し、全員出社を命じた。社員の顔色や家族の様子など全体状況の把握が早期復旧の鍵と考えたのである。作業に専念できる従業員とそうでない従業員を振り分けたことで効率的な復旧活動につながったという。
製造業者Bは、被災から復旧完了まで実に15回にわたってホームページから逐一情報を発信し続けた。当初は被害状況のようなネガティブな情報を外部に発信すれば信頼を失うのでは、と反対する声が社内から挙がったそうだが、良い意味で期待は裏切られたのである。社長は「積極的な情報発信が会社の信頼を守った」と述べている。
(了)
昆正和のBCP研究室の他の記事
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方