家畜の飼育環境が良好と言えないアジアでは、新型インフルエンザウイルス出現の可能性は高い
 

前回の記事に以下のような誤りがありました。2ページ中段の「耐性ウイルス出現の医療面への影響」の項で、上から15行目及び下から9行目に「薬理作用」とありますが、正しくは両方とも「作用機序」です。お詫び申し上げます。 

アジアの畜産業が影響

前々回、豚の呼吸器細胞が新型インフルエンザウイルスの生まれる場である可能性が高いという紹介をしました。では、次の新型インフルエンザの原因となるウイルスが、世界に先駆けて日本国内で最初に出現する可能性はあるのか、という疑問が最初に浮かびます。すなわち、人のインフルエンザウイルスと鳥のインフルエンザウイルスが、日本国内で飼育されている豚にほぼ同時に感染する可能性はあるのかという疑問です。

そのような可能性は実際にはないと思われます。なぜならば、かつては全国に多くの小規模の養豚農家や養鶏農家は存在していたのですが、現在ではそのような小規模で動物を飼育する農家はすっかり数が減りました。大型化した養豚、養鶏産業が主流となり、国内の特定の地域に点在しています。養鶏産業は主として東北、関東、中部、南九州に、養豚産業は主として九州南部などに集約しているのが現状です。

さらに、日本国内の養豚業界と養鶏業界は、それぞれ独立した業界を形成しています。このような状況では、豚が鶏と直接接触する機会はほとんどないと考えられます。また、両業界とも、企業化された、(省力化の進んだ)機能的なバイオセキュリティに配慮した運営が主流になっています。これらの業界に従事する人々が、その業界以外の人たちと接触する機会も少ないのが実態と考えられます。

さらに、他のアジア諸国とは異なり、日本のアヒル産業はごく限られた小さなものです。日本国内では、鳥インフルエンザウイルスの本来の宿主(レゼルボア)である野生のカモ類が、アヒル(マガモの一種)と接触する機会もほとんどないと考えられます。もっとも、「あいがも農法」、すなわち、水田の除草のためにアイガモを春から秋まで水田に放鳥する、という農法を取り入れている地域もありますが。

ところが、日本を除くアジア諸国では、莫大な数のアヒルが飼育されており、アヒル産業はそれぞれの国の畜産業の主力を成しています。特に、中国、東南アジア、南アジアでは、人のインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスが、豚に同時に感染する機会は決して少なくありません。なぜならば、これらの国々の牛や豚などの家畜や鶏、アヒル、ガチョウなどの家きん・水きん類を飼育している農家の多くは、これらの動物を同一敷地内で飼育しているのが一般的であるからです。動物同士および動物と人との接触は濃密です。

以上により、次の新型インフルエンザウイルスは、中国、東南アジア、南アジアなどから生まれる可能性が高いと考えられます。