自由回答

自由回答では、「マスクや消毒液が入手困難」「災害対策本部の設置やBCP発動のトリガーをどこに置くかが非常に望ましい」「(中国にある)サプライヤーの動きが把握できない」など現状の課題が多く寄せられた。

冒頭に書いたように、今回の新型肺炎は企業の業績など経済にも大きな影響を及ぼす。今後影響が長期的に悪化することも視野に、総務、人事、BCP、広報、財務、生産、営業、調達など各部門が連携しながら対策を考えていく必要がある。

現在取り組んでいること

・上司へマスク義務化やイベント・会議の縮小などを提言
・朝礼などでトップから全従業員へ注意喚起(咳エチケット、マスク着用、手指消毒など)
・社内掲示板を使った注意喚起・最新情報の提供
・中国の方との接触を控える
・国内外からの情報収集
・中国国内、近傍アジア地域へのマスクや消毒液の送付
・中国から帰国した社員(業務・私事問わず)に14日間の自宅テレワーク義務付け
・海外出張全面禁止
・国内の状況を見ながら対策を策定中
・マスクや消毒液の確保
・厚労省や外務省の情報に基づいて、逐次全社員に注意事項をアナウンスしている
・国外については、政府外務省の渡航制限に基づき対応。湖北省は出張禁止、それ以外は注意喚起
・国内については、インフルエンザ同様の感染防止の取り組みをグループ内に発信・実施
・咳エチケットの徹底
・マスク着用は本人の判断に委ねている
・手洗い励行の周知と簡易マスク配付
・2009年新型インフルエンザ流行時に策定したパンダミック対応計画を見直し
・空港を利用してくるビジターも来社するため受付はマスクを着用し、感染防止と拡散防止を図っている
・駐在者の家族含めた帰国
・BCP(インフル版)の再確認・ 来訪者用マスク備蓄
・会社としては社員の自己責任で感染対策をすべきとの考え
・上海にある関連会社との密な連絡と対応策の協議を取り組んできた
・室内のアルコール本数増強
・パンデミックになりうる感染症発生時に備え、あらかじめ対策キットを職員に配布している
・どうなったら対策本部を立ち上げる打診をするかについて、前もって部署内で話しあっている
・海外旅行へ行く際は渡航先の事前報告を義務付け
・1月23日時点で当該事案に対する当社の指針を策定・社内配信
・通常の水食糧、日常品備蓄の徹底(社員への呼びかけも)
・1月上旬の中国出張帰国者の経過観察
・完治(出勤可能)の判断基準がわからないが現状、14日在宅勤務後と予定している
・必要以上にパニックにならないような注意喚起
 

現状の課題・知りたい情報

【情報】
・ヒトヒト感染の経路、潜伏期間を知りたい
・国内で感染広がった場合の地域的な比率と、発症時に重篤化する確率
・新型肺炎の本当の危険性など、事実情報を知りたい
・現地インフラ、移動規制、発症状況などのリアルタイムの情報
・新型コロナウイルス有効医薬品(既存薬・開発品)の最新事情
・どの情報源を信頼していいか
・国内の感染拡大時の対応方法について知りたい
・想定の感染経路、重篤時の症状、重篤になりやすい症例
・ワクチンの開発状況
・重篤化を防ぐ方法
・有効な消毒液と具体的な効果
・新型肺炎対策として、他の感染症と違う特別に講じなければいけない対策は何か
・政府の今後の対応
・「電子マスク」についてのエビデンス及び有効性

【組織施設としての備え】
・マスクや消毒液が入手困難
・施設の消毒方法

【教育】
・咳をしてもマスクをしない、年配社員への対応に困っている。
・マスクの着用やうがいの有効性について専門家と厚労省とのギャップがあり
・社内コミュニケーションで悩んでいる
・感染疑いの症状の基準(インフルエンザや麻疹も流行しているため)を示すことが難しい
・マスクや消毒液の多くが期限切れ
・消毒液やマスクの他に感染対策として備蓄すべきもの

【対策】
・事前に準備すべき最低限の事項が絞れない
・災害対策本部の設置やBCP発動のトリガーをどこに置くかが非常に悩ましい
・代替生産拠点の選定方法(他の国にしてもそこが感染拡大する可能性がある)
・業種別のBCPの基本パターンや事例を知りたい
・取引先が多く、肺炎対応を個別に問い合わせが追い付かない懸念がある
・業務キャンセル時の対応等まとめきれていない
・新型インフルエンザを想定したBCPで継続業務や中断業務を定めているが、お客様もいる中、そんなことが本当にできるのか
・在宅勤務とするためには整備するテレワーク等の体制構築が必要だが、そのコストが課題
・他社の対応について情報収集したい(国内/海外)
・海外滞在社員や員の家族の帰国費用負担
・産業医や衛生管理者など、正しい情報を持っている社内担当者と、出張を管理する部署との連携がないのが課題
・近隣受入先病院に関する情報
・中国駐在員の帰国指示の基準、不要不急の出張のレベル、当該地域からの社員の帰国後の対処
・自然災害に関するBCPは作成済みだが、感染症に関しては手付かずでノウハウがない
・潜伏期間が疑われるスタッフの就業制限について
・対策ガイドラインが形骸化しており、具体的な対応が行える体制となっていない
・中国国内に在留中の駐在員の家族を一時帰国させるが、長期化して日本の学校に通う場合、風評被害が心配
・対応のための社内各種規定のテンプレおよび、感染症を対象としたBCP訓練の手順書が欲しい
・業務継続について顧客の理解が難しいため行政からの指示や呼びかけが必要
・日本からの現地駐在員へのケアをして、現地従業員(プロパー)の対応はしないでいいのか
・出張規制の解除のタイミング
・病院に事前に連絡をしてから来てもらえる場合は良いが、急に不意に来院されると、対応時に感染が拡大してしまう恐れは否定できない(病院関係)
・サプライヤーの動きが把握しきれない
・BCPについて、非常時を想定した人員・生産能力の確保(準備)と、平常時の取り扱いを他の企業はどうしているのか?
・中国からの訪問者の受入制限の可否(基準をつくれるのか、人道的に許されるか)
・感染した際の、休暇、欠勤、給与の考え方
・家族に感染の疑いが確認された場合の本人への対応
・感染拡大を想定したBCP推進に向けての行政の助成(特に中小企業向け)

 
アンケート調査を監修した兵庫県立大学教授の木村玲欧氏のコメント

アンケート結果を見たところ、危機管理で必要な2つの対策のうち、1つめの「被害を出さない」という被害抑止策しかできていない状況のように推測いたします。しかも、実施されてはいるものの徹底には至っていない事実が分かります。その被害抑止策については、例えば、手洗い、マスク着用など、基本的な予防策について、従業員の家族に対しても、徹底して啓発する必要があり、さらには今回を契機に継続的に職場の備蓄を充実させていく必要があるのではないでしょうか。しかも今回の新型肺炎については、教育・訓練などについて「現時点では何もやっていない」が7割に上るため、首相官邸や厚労省等のホームページによる正しい知識の周知徹底が必要でしょう。

また、2つめの「発生した被害を拡大させない」という「被害軽減策」は、まだまだであることが分かりました。 経営者・管理職らが不在時の意思決定代行者や担当部署の決定などを今後一層充実させる必要がありますが、そこからさらに一歩進めて、感染拡大時の自社への訪問者・来客についても、入場できる場所を制限したり、 在宅勤務によるテレビ会議や電話会議などを積極的に導入したりと、さらなる対応策が必要だと思います。これらについて、感染症を想定したBCPの策定・充実が必須になっています。基本的な予防策や備蓄に加えて、感染拡大後の災害対応策について、計画を見直して策定し、充実させる必要があります。

(了)