地震は突発型災害ですから、実際に地震が発生した後にその初動対応をスタートさせます。一方、水害は、いわゆる進行型災害です。例えば、台風が接近することにより強風や大雨が発生し、時が経過するにつれて高潮や洪水が起こるというパターンです。そこで、水害の発生によって起こり得る状況や被害を事前に関係者で共有し、時間の経過に応じた初動対応を進めることが重要です。

今回は、水害の初動対応について考えます。

初動対応編その2 水害の初動対応

水害の初動対応は、実際に水害の被害が起こる前から時間の経過に応じて進めることが重要です。

1. 台風などが自社拠点に接近している場合の対応

(1)必要な物資の購入
台風上陸の2~3日前までには、自社拠点のある地域が影響を受けるかどうかが分かります。まずその段階で、防災対策に必要な物資が足りているかどうか確認します。特に土のうや窓ガラスの飛散防止フィルムなど、建物・設備の安全確保に必要な物資の備蓄を確認し、不足している場合は購入を進めます。

これらの物資は、台風が実際に接近すると市場からなくなり、調達できない事態が起こり得ます。できるだけ平常時に備蓄の確認を終えておきましょう。

(2)建物・設備などへの対策
建物・設備などに関するハード面の対策は、風雨が強まってから行っていては危険ですから、強風や大雨に見舞われる前に作業を終えます。

自社の建物や設備への対策
・側溝や排水溝を点検し、落ち葉やごみなどを取り除く
・会社の外にある植木鉢など、強風で吹き飛ばされる可能性があるものは屋内に運び込む
・土のうや止水板を設置する
・駐車スペースが半地下あるいは地下にあり、スロープを使って入出庫する方式で、浸水を完全に防ぐことが難しい場合は、事前に車両を安全な場所に移動する
・窓ガラスに飛散防止フィルムを貼る(養生テープでもよい)
・窓枠を補強する
・電子機器類など濡れ損が発生するものについては、高所に移動する など

 

(3)社員の出退勤に関する指示
労働安全衛生法第3条において、企業は単に「労働災害防止のための最低基準を守るだけではなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにいなければならない」と定められています。
出退勤のタイミングが、台風によって風雨が強くなる時間帯と重なるような場合は、従業員を危険にさらさないため、安全確保を最優先して指示を出します。

社員の出退勤に関する指示
・翌日の出勤時間帯に風雨が強まる場合は、在宅勤務にする、あるいは台風通過後に交通機関の混乱を避けて出勤するなどの指示を出す
・月曜日など、休日の翌日に風雨が強まる場合は、休前日に指示を行う
・会社に出勤後に風雨が急に強まった場合は、風雨が収まるまで社員の帰宅を抑制し、必要に応じて宿泊などの対応も検討する
・重要業務を遂行するために、従業員を台風の接近前から宿泊させる必要がある場合は、その対応を進める など

また、在宅勤務や会社での宿泊対応は、事前準備なく実施できるものではありませんので、平常時にその体制を構築しておく必要があります。