第13回:水害の初動対応
起こり得る被害を前提に初動対応を進める

本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2020/02/19
中小企業の防災 これだけはやっておこう
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
地震は突発型災害ですから、実際に地震が発生した後にその初動対応をスタートさせます。一方、水害は、いわゆる進行型災害です。例えば、台風が接近することにより強風や大雨が発生し、時が経過するにつれて高潮や洪水が起こるというパターンです。そこで、水害の発生によって起こり得る状況や被害を事前に関係者で共有し、時間の経過に応じた初動対応を進めることが重要です。
今回は、水害の初動対応について考えます。
水害の初動対応は、実際に水害の被害が起こる前から時間の経過に応じて進めることが重要です。
(1)必要な物資の購入
台風上陸の2~3日前までには、自社拠点のある地域が影響を受けるかどうかが分かります。まずその段階で、防災対策に必要な物資が足りているかどうか確認します。特に土のうや窓ガラスの飛散防止フィルムなど、建物・設備の安全確保に必要な物資の備蓄を確認し、不足している場合は購入を進めます。
これらの物資は、台風が実際に接近すると市場からなくなり、調達できない事態が起こり得ます。できるだけ平常時に備蓄の確認を終えておきましょう。
(2)建物・設備などへの対策
建物・設備などに関するハード面の対策は、風雨が強まってから行っていては危険ですから、強風や大雨に見舞われる前に作業を終えます。
(3)社員の出退勤に関する指示
労働安全衛生法第3条において、企業は単に「労働災害防止のための最低基準を守るだけではなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにいなければならない」と定められています。
出退勤のタイミングが、台風によって風雨が強くなる時間帯と重なるような場合は、従業員を危険にさらさないため、安全確保を最優先して指示を出します。
また、在宅勤務や会社での宿泊対応は、事前準備なく実施できるものではありませんので、平常時にその体制を構築しておく必要があります。
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