2020/03/06
日本企業が失敗する新チャイナ・リスク
■BCP、BCMでも日系企業が先導できる余地
では、実際に中国現地企業のBCPに対する取り組みがどれだけ進んでいるかを見てみましょう。
論文やニュース類を検索してみたところ、保険会社(例えば、平安人寿)が「危機管理及び災害対策」の一環として提出した論文がありました。
このサイトでは、BCPの概念について蘭州大学の教授が説明を行っています。
IT系企業及び金融機関等では「データの安全性についてのBCP」関連研究が存在します。例えば、データの定期自動バックアップ及び保護等についての取り組み事例などが報告されています。
今回、新型コロナウイルス感染による肺炎災禍を背景にして、いち早くBCPに関する文章を発表したコンサルティング企業も存在しています。この企業は、広州に籍を置く企業であり、2001年に設立されて以降、企業へのコンサルティング業務を行ってきているようです。
以上のような情報が見つかりましたが、まだネット上に情報は少なく、現地企業のBCPに対する認識自体が成熟していないことが伺えます。
中国現地企業のこれまでの経営手法や経営スタイルを見る限り、彼らの多くは日系企業のように起業して永続することを望むよりは、短期的にでも利益を最大化し、日本人の目から見れば博打的なビジネスを行うことが多く、BCPに力を注ぐよりは利益最大化に注力する傾向があります。

しかし、世界的に大きな影響を及ぼす起業も増え、自社だけの利益を最大化することばかりではなく、社員の福利厚生、ビジネスパートナーとなる企業への影響、環境問題、中国国家発展への直接間接的つながりなどが意識されて始めており、ここにきて企業としての永続性に注目が集まっていることも事実です。
よって、近い将来中国中央政府が、中国国家規格(GB規格)として、BCP(すでに環境分野においては「突発環境事故に対する応急方案」の規格が策定され公布されています)の概念と規格を策定する方向に進みつつあることは間違いなく、日系企業がこの分野において先陣を切ってモデルとして認知されることも可能な状況にあります。
特に、これまで無形のサービスに対しては報酬を払わない文化(中国では「物を製造し、物の価値の代償として金銭を受け取ることが経済活動」という概念が大半)の中にあった中国企業が、やっと企業理念や企業政策、施策に対する教育などに対価を払う時代に変化しつつある背景を考えると、BtoG(企業対政府)の取り組みとして、日系企業から政府機関へのアプローチが可能な時代になったということができるでしょう。
日系企業の検討を祈る次第です。
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